「知り合いにWebに詳しい人がいるから、安く作ってもらった」。中小企業や個人事業主のホームページでは珍しくない話です。知り合いの紹介、友人のフリーランス、親戚のIT担当者。制作費は相場の半額以下、場合によっては数万円で作ってもらえた。初期費用だけを見れば賢い選択に思えます。しかし、弊社に保守の相談に来るサイトの中で、最も手がかかるのが「知り合いに作ってもらったサイト」です。管理情報がない、コードが独自すぎる、セキュリティが未設定。安さの代償は、管理の難しさという形で長期間にわたって降りかかります。この記事では、知り合い制作サイトが抱える問題と、その改善方法を解説します。
知り合いに頼むと「安い」が、その安さには代償がある
知り合いに制作を頼む最大の動機は「費用を安く抑えられる」ことです。制作会社に依頼すれば30〜80万円かかるところを、5万円や10万円、場合によってはタダ同然で作ってもらえる。経営者にとってこの価格差は魅力的に映ります。しかし、ホームページは「作る」だけでなく「維持・管理する」ものです。制作費は安くても、管理のしにくさという形で長期的なコストが発生します。安さの裏には見えにくい代償が潜んでいます。
契約書がないから責任の範囲が曖昧
知り合いに頼む場合、契約書を交わすケースはほぼありません。「ざっくりこんな感じで」「とりあえず作っておくよ」という口約束でスタートし、仕様書も見積書も納品書もない状態で完成します。
問題は、何かトラブルが起きたときに「誰の責任か」が曖昧になることです。サイトに不具合が出ても「無料で作ったのだからそこまでは対応できない」と言われれば、それ以上求めることはできません。制作会社であれば契約書に基づいて対応を求められますが、知り合いとの間にはその根拠がありません。(善意で作ってもらったものに、クレームは入れにくいのが人間心理です)
また、契約書がないということは「いつまでに」「何を」「いくらで」という基本的な合意すら曖昧だということです。制作途中で追加の要望を出したら「それは聞いていない」と言われたり、逆に「これくらいやってくれると思っていた」という認識のズレが生まれたりします。お互いに悪意はなくても、認識のズレは確実にストレスを生みます。
「お願い」ベースの関係だから修正の催促がしにくい
制作会社に修正を依頼する場合は「月額を支払っているのだから対応してほしい」と言えます。しかし、知り合いに安く作ってもらったサイトの場合、修正依頼は「お願い」になります。相手が忙しそうだと催促もできず、「時間があるときでいいよ」と遠慮してしまう。結果として、修正に数ヶ月かかることも珍しくありません。
ビジネスにおいて、自社のホームページの修正を「相手の都合」に委ねるのは、経営判断として健全ではありません。サイトの更新が必要なタイミングで更新できないことは、そのまま機会損失につながります。年末年始の営業時間変更を載せたいのに、知り合いが忙しくて対応してもらえず、結局年明けまでサイトに古い情報が載ったまま。こうした小さな不都合が積み重なっていくのです。
知り合い制作のサイトに共通する技術的な問題点
知り合い制作のサイトには、技術面で共通する問題があります。これらは制作者の腕の良し悪しの問題ではなく、「個人が片手間で作る」という構造上の問題です。どれだけスキルが高い人でも、本業の合間に作るサイトと、プロとして責任を持って作るサイトでは、品質と管理体制に大きな差が出ます。
ドキュメントや引き継ぎ資料が一切ない
プロの制作会社であれば、納品時にサーバー情報、ドメイン情報、WordPressのログイン情報、使用しているプラグインの一覧などをまとめた引き継ぎ資料を作成します。知り合い制作の場合、こうした資料が存在しないことがほとんどです。
サーバーのログイン情報がわからない、ドメインをどこで取得したか不明、WordPressの管理者パスワードが誰も知らない。弊社が引き継ぎ相談を受ける「知り合い制作サイト」の約半数が、この状態です。管理情報が不明なサイトは、保守の引き継ぎ自体に通常の倍以上の手間と時間がかかります。
独自の作り方をしていて他の人が触れない
プロの制作会社は、WordPressの標準的なテーマ構造やコーディング規約に沿ってサイトを構築します。これは、将来別の人が保守を引き継いだときにも理解しやすいようにするためです。
一方、知り合いが作ったサイトは、その人独自のやり方で構築されていることが多く、他の技術者が中身を理解するのに時間がかかります。テーマファイルを直接編集している、プラグインを使わずに独自のPHPコードで機能を実装している、CSSが1つのファイルに数千行書かれているなど、「作った本人にしかわからない」状態になっているケースが少なくありません。(プロから見ると「解読」に近い作業が必要になることもあります)
セキュリティやバックアップの設定が不十分
知り合いに作ってもらったサイトで、セキュリティプラグインが導入されている、定期バックアップが設定されている、SSL証明書が適切に管理されているというケースは稀です。IPAの「2024年度 中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査」によると、情報セキュリティ対策投資をしていない企業は62.6%に達しています(出典 IPA 2024年度中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査)。知り合いに作ってもらったサイトは、この統計に含まれている可能性が高いと言えます。
サイトを「作る」ことと「守る」ことは別のスキルです。Webデザインやコーディングが得意な人でも、セキュリティ対策やサーバー管理に精通しているとは限りません。制作時にはセキュリティの設定まで手が回らず、納品後も誰も気にしないまま放置される。これが知り合い制作サイトの典型的なパターンです。
同調査では、サイバーインシデントが発生した企業の被害額の平均は73万円、復旧期間の平均は5.8日と報告されています。セキュリティ未設定のまま放置されたサイトが攻撃を受けた場合、「安く作ってもらった」メリットは一瞬で吹き飛びます。制作費を5万円節約したつもりが、被害復旧に73万円かかるのでは、割に合いません。
「知り合いだから」で発生する人間関係のジレンマ
知り合い制作の最大の問題は、技術面よりもむしろ人間関係にあります。ビジネスの取引に「人間関係の気遣い」が入り込むと、必要な判断ができなくなります。制作会社との取引であれば「費用に見合わない」「対応が遅い」と判断すれば乗り換えればよいだけですが、知り合いとの関係ではそうはいきません。
品質に不満があっても指摘しにくい
デザインがイメージと違う、スマホで見るとレイアウトが崩れている、表示速度が遅い。制作会社であれば遠慮なく修正を求められますが、知り合いに対しては「せっかく安く作ってくれたのに文句は言えない」という心理が働きます。
結果として、不満を抱えたままのサイトが何年も稼働し続けます。ホームページは会社の顔です。その顔の品質を「人間関係への配慮」で妥協してしまうのは、経営判断として本末転倒です。プロの制作会社に依頼すれば「デザインをもう少しこうしてほしい」「この部分はイメージと違う」と遠慮なく伝えられます。お金を払っている以上、品質に対して要求するのは当然の権利です。知り合いとの取引では、この当然の権利が行使しにくくなります。
関係が悪化するとサイトの管理を放棄される
知り合いとの関係が何かのきっかけで疎遠になると、サイトの管理も放棄されます。制作会社であれば契約に基づいて対応を求められますが、知り合いとの間には契約がないため、対応を強制する手段がありません。
弊社に駆け込みで相談に来るケースの中には、「サイトを作ってくれた知り合いと連絡が取れなくなり、サーバーのパスワードもわからず、サイトの更新が一切できない」という状態のものがあります。こうなると、管理情報の調査からやり直す必要があり、通常の保守引き継ぎよりも大幅にコストがかかります。
制作会社との契約であれば、関係が悪化しても契約に基づいて引き継ぎ情報の引き渡しを求めることができます。しかし、知り合いとの間には契約がないため、法的に情報の引き渡しを求めることは困難です。「もう対応する気はない」と言われたら、そこで行き止まりです。
知り合いが忙しくなると対応が止まる
知り合いにサイトを作ってもらう場合、相手が本業の合間や趣味の延長で対応しているケースがほとんどです。副業として請け負っている場合でも、本業が忙しくなればサイトの対応は後回しにされます。
「ちょっと今月は忙しくて」「来月には対応するから」。こうしたやり取りが繰り返され、気づけば半年以上サイトが放置されている。WordPressの更新は止まり、プラグインの脆弱性も放置されたまま。知り合いに悪意はなくても、本業の片手間で他社のサイトを安定的に管理し続けることは、構造的に無理があるのです。
最悪のケースでは、知り合いが引っ越したり、転職したり、単純に興味を失ったりして、一切の連絡が途絶えます。その時点でサーバーやドメインの管理情報が自社にないと、サイトを維持することすらできなくなります。サーバーの料金を知り合いが立て替えていた場合、支払いが止まってサイトが突然消えることもあります。連絡が取れなくなってから慌てても手遅れです。
知り合い制作サイトを保守会社が引き継ぐ際に苦労するポイント
弊社がこれまでに引き継いだ「知り合い制作サイト」で、共通して苦労する点をまとめます。これらの問題は1つのサイトに複数該当することが多く、すべてを解消するには相応の時間とコストが必要です。
| 問題点 | 具体的な状況 | 通常の制作会社サイトとの違い |
|---|---|---|
| 管理情報の不在 | サーバー・ドメイン・WordPressのログイン情報が一切不明 | 通常は納品時に引き継ぎ資料あり |
| コードの独自性 | テーマファイルの直接編集、独自PHP、未整理のCSS | 通常は標準的な構造で構築 |
| WordPressの放置 | 本体・プラグインが数年間更新されていない | 通常は保守契約で定期更新 |
| バックアップの不在 | バックアップが一度も取得されていない | 通常は自動バックアップ設定済み |
| SSL未対応 | HTTPSに対応していない、または証明書が期限切れ | 通常はSSL設定済みで管理対象 |
これらの問題を解消するためには、通常の保守引き継ぎに比べて多くの調査・復旧作業が必要になります。管理情報の調査だけで数日、コードの解読に1〜2週間、セキュリティの初期設定にさらに数日。結果として、初期の引き継ぎ費用が通常より高くなることがあります。
「安く作ってもらった」はずのサイトが、長期的にはプロに頼むよりも高くついてしまうのは、こうした構造的な問題があるからです。制作費を10万円節約したつもりが、引き継ぎと復旧に20万円以上かかった。こうした逆転現象は珍しくありません。
すでに知り合いに作ってもらったサイトの改善方法
すでに知り合いに作ってもらったサイトを運用している場合でも、今から改善することは十分に可能です。ポイントは「知り合いとの関係を壊さずに、管理体制をプロの水準に引き上げる」ことです。知り合いの善意を否定する必要はありません。管理の部分だけをプロに任せればよいのです。
まず管理情報を整理する
サイトに関する管理情報を、知り合いから受け取って自社で整理してください。最低限、以下の情報を確保しておく必要があります。
- ドメインの管理画面のログイン情報と登録名義
- サーバーの管理画面のログイン情報と契約名義
- WordPressの管理者アカウント(ID・パスワード)
- FTP接続情報
- メールアカウントの設定情報(サーバーでメールを利用している場合)
知り合いとの関係が良好なうちに、これらの情報を受け取っておくことが極めて重要です。「管理情報をまとめてほしい」とお願いすること自体は、相手を信用していないという意味ではありません。むしろ「自分でも把握しておきたい」という経営者として当然の姿勢です。関係が疎遠になってからでは手遅れになる可能性があります。
管理情報を受け取ったら、自社のパソコンやクラウドストレージに保存し、社内の複数人がアクセスできる状態にしておいてください。知り合い1人だけが管理情報を持っている状態は、企業の資産管理として極めて危険です。ドメインとサーバーの名義が知り合い名義になっている場合は、このタイミングで自社名義への変更も依頼しておきましょう。
プロの保守会社にサイト診断を依頼する
管理情報を確保したら、プロの保守会社にサイトの現状診断を依頼してください。WordPressのバージョン、プラグインの状態、セキュリティ設定、表示速度など、現時点でのサイトの「健康状態」を把握することが、改善の第一歩です。
診断の結果、軽微な修正で運用を続けられる場合もあれば、リニューアルが必要な場合もあります。いずれにしても、現状を正確に把握しないまま放置するのが最もリスクが高い選択です。
リニューアルが必要と判断された場合でも、既存のコンテンツ(テキストや画像)は流用できることがほとんどです。デザインとシステムを一新し、管理しやすい構造で作り直すことで、今後の保守コストも大幅に下がります。最初から適正価格で制作し、プロの保守体制を構築しておけば、「知り合いに頼んだ場合のトータルコスト」よりも安く済むケースが多いのが現実です。
最後に
知り合いにサイトを作ってもらうこと自体が悪いわけではありません。相手がプロレベルのスキルを持ち、管理情報をきちんと引き渡してくれるなら、良い選択になることもあります。しかし多くの場合、問題は「安く作った後の管理」が誰の責任でもなくなることです。契約書がない、引き継ぎ資料がない、管理情報が不明。こうした状態が重なると、サイトの修正も更新もセキュリティ対策もできない「管理不能」な状態に陥ります。これは「安い」の代償としてはあまりにも大きいリスクです。ホームページは作って終わりではなく、作った後の管理こそが重要です。
Web管理では、知り合いや個人に作ってもらったサイトの引き継ぎ・保守にも対応しています。「管理情報がわからない」「知り合いと連絡が取れなくなった」「サイトの状態が不安」という方も、まずは現状調査からお手伝いすることが可能です。お気軽にご相談ください。

