サーバー移転は、ホームページの運用において避けて通れない場面があります。レンタルサーバーの契約満了、サーバー会社のサービス終了、表示速度の改善、コスト見直し。契約更新を忘れてしまった場合の復旧についてはサーバーの契約更新を忘れてドメインを失効させた場合の復旧確率で解説しています。理由はさまざまですが、いずれの場合も「サーバー移転は失敗すると怖い」という声が必ず上がります。実際、弊社に寄せられる相談の中でも「移転に失敗してサイトが表示されなくなった」「データが消えた」というトラブルは少なくありません。この記事では、サーバー移転が怖いと言われる具体的な理由と、失敗しないための対策を運用保守の実務経験に基づいて解説します。
サーバー移転で最も多い失敗は「サイトが表示されなくなる」
サーバー移転における最大のリスクは、移転作業中または移転後にサイトが表示されなくなることです。ホームページが数時間から数日間にわたって表示されない状態が続けば、その間の問い合わせや売上は完全にゼロになります。弊社の運用実績では、他社で移転に失敗した案件を引き継いだケースの約半数が、このサイト非表示トラブルに該当しました。
DNS設定の切り替えミスが原因の大半を占める
サイトが表示されなくなる原因の大半は、DNS(ドメインネームシステム)の設定ミスです。DNSとは、ドメイン名(例えばexample.com)とサーバーのIPアドレスを紐づける仕組みです。サーバーを移転する場合、この紐づけ先を旧サーバーから新サーバーに変更する必要があります。この変更作業でミスが起きると、ドメインがどのサーバーにも紐づかない状態になり、サイトが表示されなくなります。
DNS設定は変更後すぐに反映されるわけではなく、世界中のDNSサーバーに伝わるまで最大24〜72時間かかります。DNS絡みでサイトが表示されなくなるトラブル全般はホームページが見れない原因と解決方法も参考になります。この伝播(でんぱ)の時間を計算に入れずに旧サーバーを解約してしまうと、DNSの反映が完了するまでの間、サイトが完全に消えた状態になります。(この「DNS伝播」を理解していない制作会社は、想像以上に多いです)
さらに厄介なのは、DNS設定のミスは「設定した本人の環境では正常に見える」場合があることです。DNSのキャッシュがローカル環境に残っているために、自分のパソコンでは問題なく表示されるのに、他のユーザーからは見えないという状況が起こります。「自分の画面では問題ないから大丈夫」と判断した結果、実は大半のユーザーがアクセスできていなかった。このパターンに気づくのは数日後ということも珍しくありません。
旧サーバーの早期解約がトラブルを引き起こす
サーバー移転で頻発するもう一つのミスは、新サーバーへのデータ移行が完了する前に旧サーバーを解約してしまうことです。旧サーバーの契約更新日が迫っているからと焦って解約すると、移行が不完全な状態でサイトが切り替わり、ページが崩れる、画像が表示されない、フォームが動かないといった不具合が発生します。旧サーバーは新サーバーでの動作確認が完了し、DNS伝播が終わるまで最低2週間は残しておくのが鉄則です。
データ消失は取り返しがつかない最悪の事態
サーバー移転の失敗で最も深刻なのは、データの消失です。サイトのファイル、データベース、メールのデータが失われた場合、バックアップがなければ復旧は不可能です。ゼロからサイトを作り直すことになり、費用は数十万円から数百万円、復旧期間は数週間から数ヶ月に及びます。
バックアップなしの移転は「命綱なしの綱渡り」
弊社が引き継いだ案件の中には、移転前のバックアップを一切取らずに作業を進め、移転途中でデータが破損したケースがありました。旧サーバーは既に解約済み、新サーバーにはデータが正しくコピーされていない。結果として、5年分の更新履歴を含むサイトデータが完全に消失しました。復旧費用は新規制作と同等の80万円。バックアップさえ取っていれば、移転費用の数万円で済んだ話です。
IPA(情報処理推進機構)もバックアップの重要性を繰り返し啓発しており、「情報セキュリティ5か条」の一つに「バックアップを取得すること」を挙げています(出典 IPA 情報セキュリティ5か条)。サーバー移転に限らず、日常的なバックアップ体制を整えていないサイトは、あらゆるトラブルに対して脆弱です。
データベースの移行ミスでサイトが完全に壊れる
WordPressサイトの場合、サイトのコンテンツ(投稿、固定ページ、設定情報)はすべてデータベース(MySQL)に格納されています。サーバー移転時には、このデータベースを旧サーバーからエクスポートし、新サーバーにインポートする作業が必要です。この際、文字コードの不一致やデータベースのバージョン差異が原因で、データが文字化けしたり、インポート自体が失敗したりすることがあります。
特に古いサーバーからの移転では、MySQLのバージョンが大きく異なるケースがあり、旧サーバーで使えていたSQL構文が新サーバーで動作しないという問題が起こります。また、データベースのサイズが大きい場合(数百MB以上)、phpMyAdminからのエクスポート・インポートがタイムアウトで失敗することもあります。この場合はSSH接続でのコマンドライン操作が必要になり、技術的なハードルがさらに上がります。WordPress.orgの公式ドキュメントでも、サーバー移行時のデータベース取り扱いについて注意喚起しています(出典 WordPress.org Moving WordPress)。データベースの移行は、ファイルのコピーよりも技術的な難易度が高く、経験のない人が手作業で行うと高確率でトラブルが発生します。
メールが届かなくなるトラブルも見落とされがち
サーバー移転の影響はホームページだけではありません。レンタルサーバーでメールも利用している場合、サーバー移転に伴ってメールが届かなくなる、送信できなくなるというトラブルが頻発します。特に独自ドメインのメールアドレス(info@example.comなど)を業務で使用している場合、メールの不通は事業に直結するダメージになります。
MXレコードの変更漏れが原因
メールのトラブルで最も多い原因は、MXレコード(メールの配送先を指定するDNS設定)の変更漏れです。サーバーを移転した際にWebサイト用のDNS設定(Aレコード)は変更したが、メール用のMXレコードを変更し忘れるというミスが起こります。この場合、サイトは正常に表示されるのにメールだけが届かないという状況になり、原因の特定に時間がかかることがあります。(メールが届かないことに数日間気づかず、その間の問い合わせがすべて消えていたケースもあります)
メールサーバーとWebサーバーを分離すべきケースもある
サーバー移転を機に、メールサーバーとWebサーバーを分離することを検討すべきです。同じサーバーでWebとメールを運用している場合、サーバー障害が発生するとサイトもメールも同時に停止します。Webサーバーの移転時にメールのトラブルが発生するのも、両方を同じサーバーで運用しているからです。メールはGoogle WorkspaceやMicrosoft 365といった専用サービスに移行し、Webサーバーとは独立させるのが、トラブルを減らす有効な方法です。
SSL証明書の設定漏れで「安全ではありません」と表示される
サーバー移転後に見落とされやすいのがSSL証明書(通信を暗号化する仕組み)の再設定です。旧サーバーで設定していたSSL証明書は、新サーバーには自動的に引き継がれません。新サーバーでSSLの設定を行わないままサイトを公開すると、ブラウザに「この接続は安全ではありません」という警告が表示され、訪問者がサイトにアクセスできなくなります。
Googleの検索順位にも悪影響を及ぼす
SSL化されていないサイト(httpのままのサイト)は、Googleの検索順位においても不利になります。GoogleはHTTPS(SSL化されたサイト)をランキングシグナルの一つとして使用しており、SSL未対応のサイトは検索順位が下がる可能性があります(出典 Google Search Central Blog HTTPS as a ranking signal)。サーバー移転後にSSLの設定を忘れたまま数週間放置してしまうと、その間に検索順位が下落し、回復までにさらに時間がかかる場合があります。
新サーバーへの移転後は、SSL証明書の設定を最優先で行うべきです。多くのレンタルサーバーでは無料のSSL証明書(Let’s Encrypt)が利用できるため、費用面のハードルはほぼありません。設定を忘れているだけで検索順位と信頼性の両方を失うのは、最も避けるべきミスの一つです。SSL化の具体的な設定手順はHPのHTTPS化完全ガイドで詳しく解説しています。
また、旧サーバーでHTTPからHTTPSへのリダイレクト設定(.htaccessなど)を行っていた場合、新サーバーでもその設定を忘れずに移行する必要があります。リダイレクト設定が抜けると、httpのURLでアクセスしたユーザーがSSL警告に遭遇するだけでなく、検索エンジンに登録されているhttpのURLからの流入も失われます。SSL証明書の設定とリダイレクト設定はセットで確認すべきです。
WordPressサイトの移転は特に難易度が高い
WordPressサイトのサーバー移転は、静的なHTMLサイトと比較して格段に難易度が上がります。ファイルのコピーだけでは移転が完了しない点が、WordPress特有の難しさです。
wp-config.phpの書き換えミスでサイトが真っ白になる
WordPressの設定ファイルであるwp-config.phpには、データベースの接続情報(ホスト名、データベース名、ユーザー名、パスワード)が記載されています。サーバーを移転した場合、新サーバーのデータベース情報に合わせてwp-config.phpを書き換える必要があります。この書き換えを間違えると、WordPressがデータベースに接続できず、サイトが真っ白になるか、「データベース接続確立エラー」という画面が表示されます。
また、wp-config.php内のサイトURL設定(WP_HOMEとWP_SITEURL)が旧サーバーのURLのままになっていると、リダイレクトループが発生してサイトにアクセスできなくなることもあります。(この1行の書き換えミスだけで、サイトが完全にダウンするのがWordPressの怖いところです)
プラグインやテーマの互換性問題が移転後に発覚する
旧サーバーでは正常に動作していたプラグインやテーマが、新サーバーのPHPバージョンやサーバー設定の違いによって動作しなくなることがあります。特にPHPのバージョンが旧サーバーよりも新しい場合、古いプラグインが非推奨の関数を使用しているとエラーが発生し、サイトの表示が崩れたり、管理画面にログインできなくなったりします。
WordPress.orgの統計によると、WordPressサイトの約20%が依然としてPHP 7.4以前のバージョンを使用しています(出典 WordPress.org Stats)。古いPHP環境からの移転では、PHPバージョンの差異による互換性問題が高い確率で発生するため、事前のテスト環境での動作確認が不可欠です。
サーバー移転を安全に進めるために押さえるべきポイント
サーバー移転の失敗は、事前の準備と手順の徹底で大部分が防げます。以下のポイントを押さえた上で作業を進めれば、重大なトラブルに見舞われるリスクを大幅に下げられます。
移転前のバックアップは「二重」で取る
移転前には、必ずサイト全体のバックアップを取得してください。バックアップの対象は以下の3つです。
- Webサイトのファイル一式(WordPress本体、テーマ、プラグイン、アップロード画像など)
- データベース(MySQLのダンプファイル)
- メールデータ(サーバーでメールを運用している場合)
バックアップはサーバー上とローカル環境(自分のパソコン)の二箇所に保管するのが鉄則です。サーバー上だけにバックアップを置いていると、サーバー自体のトラブルでバックアップごと失われるリスクがあります。
テスト環境で事前に動作確認を行う
新サーバーにデータを移行した後、すぐにDNSを切り替えてはいけません。まず、hostsファイルの書き換えや新サーバーの仮URLを使って、新環境でサイトが正常に動作するかを確認します。チェックすべき項目は以下の通りです。
| 確認項目 | 確認内容 |
|---|---|
| トップページの表示 | デザインの崩れ、画像の欠落がないか |
| 各ページの遷移 | 内部リンクが正常に動作するか |
| 問い合わせフォーム | 送信・受信が正常に行えるか |
| 管理画面 | ログイン可能か、投稿の編集ができるか |
| SSL証明書 | HTTPSでアクセスできるか、警告が出ないか |
| 表示速度 | 旧サーバーと比較して極端に遅くないか |
DNS切り替え後も旧サーバーは最低2週間残す
DNSの切り替え後、世界中のDNSサーバーに新しい設定が伝播するまでに24〜72時間かかります。この間、一部のユーザーは旧サーバー、別のユーザーは新サーバーにアクセスする状態が続きます。旧サーバーを早期に解約すると、DNS伝播が完了していないユーザーがサイトにアクセスできなくなります。DNS切り替え後、最低2週間は旧サーバーを稼働させたまま残しておくのが安全です。
自力移転と業者委託、どちらが正解か
サーバー移転を自力で行うか、専門業者に委託するかは、サイトの規模と技術的な知識によって判断が分かれます。
| 判断基準 | 自力移転 | 業者委託 |
|---|---|---|
| サイト構成 | 静的HTMLサイト、ページ数10ページ以下 | WordPress、データベースを使用するサイト |
| 費用 | 無料(自分の作業時間のみ) | 3万〜10万円が相場 |
| リスク | ミスした場合の復旧を自分で行う必要がある | 業者側で復旧対応が可能 |
| 所要時間 | 慣れていれば数時間、不慣れなら数日 | 通常1〜3営業日で完了 |
結論として、WordPressサイトやデータベースを使用するサイトの移転は、専門業者に委託するのが賢明です。業者選定の観点はWordPress保守代行サービスの選び方も参考にしてください。静的HTMLサイトであっても、独自ドメインのメールを利用している場合はメール設定の移行が伴うため、自力移転のリスクは低くありません。自力移転で失敗した場合の復旧コスト(数万〜数十万円)を考えれば、最初から3万〜10万円で業者に依頼するほうがトータルコストは低く抑えられます。(「自分でやれば無料」と思って作業して、結局壊して修復費用が10万円かかったという話は、実際に何度も見てきました)
制作会社に「移転できない」と言われたときの対処法
サーバーの移転を検討した際に、制作会社から「移転はできません」「移転するとサイトが壊れます」と断られるケースがあります。技術的にサーバー移転ができないということは、基本的にありません。制作会社が移転を断る理由は、技術的な問題ではなく、ビジネス上の理由であることがほとんどです。
「移転できない」の本当の理由は囲い込み
制作会社がサーバー移転を断る理由として多いのは以下の3つです。類似のトラブルとして「著作権は弊社にあります」→サイト移転できない時の解決策も参考にしてください。
- 自社管理のサーバーから移転されると、保守契約が解約されて売上が減る
- 制作時に独自のシステムやテーマを使用しており、他の環境では動作しない(移転されると困る構造にしている)
- 移転作業の技術力がなく、対応したくない
いずれの理由も、顧客の利益よりも自社の都合を優先した判断です。サーバーの管理権限やドメインの所有権がサイトオーナー側にあるのであれば、制作会社の同意がなくてもサーバー移転は可能です。管理権限やログイン情報が制作会社に握られている場合は、まずそれらの情報の開示を求めてください。開示を拒否される場合は、契約書の内容を確認した上で、別の業者に相談することを推奨します。なお、ドメインの所有権は「ドメインの登録者情報(Whois情報)に記載されている名義人」にあります。制作会社名義で登録されている場合は、まず名義変更(ドメイン移管)を行う必要があります。ドメインの所有権はサイトオーナーの正当な権利であり、制作会社がこれを拒否する法的根拠は原則としてありません。
弊社にも「制作会社が移転に応じてくれない」という相談が定期的に寄せられます。多くの場合、管理権限の開示請求や第三者を介した交渉で解決できます。どうしても対応してもらえない場合でも、ドメインさえ確保できればサイトの再構築は可能です。泣き寝入りする必要はありません。
最後に
サーバー移転が「失敗すると怖い」と言われるのは、失敗した場合の影響がサイトの停止、データの消失、メールの不通、検索順位の下落と多岐にわたるからです。いずれも事業に直結するダメージであり、復旧にはコストと時間がかかります。しかし、これらのリスクは事前の準備と正しい手順を踏むことで、ほぼすべて防ぐことができます。バックアップの二重取得、テスト環境での動作確認、旧サーバーの一定期間の維持。この3つを徹底するだけで、サーバー移転の失敗リスクは大幅に下がります。
Web管理では、サーバー移転の代行も承っています。他社で制作されたWordPressサイトの移転や、制作会社との契約が切れたサイトの引き受けも対応可能です。「今のサーバーを移転したいが、どう進めればいいかわからない」「制作会社に移転を断られた」というご相談も歓迎です。サーバー周りのことは丸投げして、本業に集中できる環境を一緒に作りましょう。




