ホームページは「作って終わり」ではなく、公開後の運用・保守こそが本番です。しかし、制作会社の中には納品後のフォローをほぼ行わない会社が少なくありません。制作時の対応が丁寧だったとしても、公開後に連絡が取れなくなる、修正依頼に何週間も待たされる、セキュリティ対策は放置。こうした放置が続くと保守なしサイトの末路を辿ることになります。こうした「アフターフォローなし」の制作会社に当たると、追加費用や事業上の損失が発生します。この記事では、制作前の段階でアフターフォローのない会社を見抜くためのチェックポイントを、運用保守の実務家の視点から解説します。
アフターフォローがない制作会社は全体の半数以上
中小企業庁の調査によると、中小企業がホームページを持つ上で感じている課題として「運用・更新の手間」「効果が出ない」が上位に挙がっています(出典 中小企業庁 中小企業白書)。この背景には、制作会社が「作る」ことに特化し、公開後のサポートを重視していないという業界構造があります。
制作会社にとって利益率が高いのは新規制作です。保守・運用は手間がかかる割に単価が低く、積極的に取り組みたがらない会社が多いのが実情です。弊社に相談に来る事業者の約6割が、「制作会社に連絡しても返事が遅い」「そもそも保守契約の提案すらなかった」と訴えています。(制作会社にとって保守は”おまけ”ですが、サイトオーナーにとっては”命綱”です)
ホームページの制作費は数十万円から数百万円。この投資を無駄にしないためには、制作前の段階で「この会社は納品後もきちんとフォローしてくれるか」を見極める必要があります。見極めのポイントは、契約内容や営業トークではなく、具体的な体制と実績です。
契約書に「保守・運用」の記載がない会社は要注意
アフターフォローのない制作会社を見分ける最も確実な方法は、契約書の中身を確認することです。見積書や契約書に「保守」「運用サポート」「納品後の対応」に関する項目が一切記載されていない場合、その会社は最初からアフターフォローを提供するつもりがない可能性が高いと判断できます。
見積書に「保守費用」の項目がなければ納品で終了の合図
制作費の見積書に「月額保守費用」や「運用サポート費」の欄がない場合、その会社は制作完了をもって契約終了と考えています。見積書は会社のサービス設計そのものです。保守の欄がないということは、保守というサービスが存在しないということです。営業担当が口頭で「何かあればご連絡ください」と言ったとしても、書面に記載がなければ義務は発生しません。(口約束は約束ではありません)
注意すべきは、「保守費用」が見積書に載っていても中身が空洞なケースです。月額3,000円程度の保守プランで、実際にやっていることはサーバー費の代行支払いだけ。WordPress本体やプラグインの更新、セキュリティ監視、バックアップは一切含まれていない。こうした「名ばかり保守」は保守とは呼べません。見積書を受け取ったら、保守の項目に具体的な作業内容が列挙されているかを必ず確認してください。「保守一式」とだけ書かれている場合は、何が含まれているのかを書面で明確にしてもらうべきです。
契約書の「瑕疵担保期間」が極端に短い会社は逃げ切り型
制作物の不具合に対応する期間(瑕疵担保期間、現在の民法では「契約不適合責任」の期間)が、納品後1か月などと極端に短く設定されている場合は注意が必要です。通常、Webサイトの瑕疵担保期間は3か月〜6か月が一般的です。1か月というのは、制作に起因する不具合が発覚しても対応する気がないことを意味しています。
民法上の契約不適合責任は、買主が不適合を知ったときから1年以内に通知すれば請求できると規定されています(出典 e-Gov法令検索 民法第566条)。契約書でこれより短い期間を設定すること自体は可能ですが、極端に短い場合は「早く手を切りたい」という制作会社の姿勢が透けて見えます。
納品後の「連絡手段」と「対応速度」を事前に確認する
アフターフォローの質は、連絡のしやすさと対応の速さで決まります。制作前の商談時に、以下の点を具体的に確認してください。ここで曖昧な回答しか返ってこない会社は、納品後のフォローに期待できません。
問い合わせ窓口が「担当者の個人メール」だけなら危険信号
納品後の連絡先が担当者個人のメールアドレスや携帯電話番号だけの場合、その担当者が退職した瞬間に連絡手段がなくなります。会社としてのサポート窓口(代表メール、問い合わせフォーム、チケット管理システムなど)が用意されているかを確認してください。個人の連絡先しかない会社は、組織としてのサポート体制が整っていない証拠です。
実際に、制作担当者の退職後にサイトの修正依頼をしたところ「前任者の案件なので対応できません」と言われた事例があります。担当者個人に紐づいたサポートは、担当者の退職・異動で消滅します。会社としてのサポート窓口があるかどうかは、必ず契約前に確認しておくべき項目です。
修正依頼から対応完了までの目安を明示できない会社は体制不足
「テキストの修正を依頼した場合、何営業日で対応してもらえますか」と聞いてみてください。まともな保守体制を持つ会社であれば、「軽微な修正は2〜3営業日以内」「緊急時は当日対応」といった具体的な目安を回答できます。「できるだけ早く対応します」「状況によります」としか答えられない会社は、対応のルールが社内で決まっていないということです。つまり、後回しにされても文句が言えません。
修正対応のスピードは、事業に直結する問題です。商品の価格が変わった、営業時間が変更になった、キャンペーンの告知をしたい。これらの更新が何週間も放置されれば、サイトを見た顧客に間違った情報を伝えることになります。表示速度が遅いサイトよりも、情報が古いサイトのほうが事業へのダメージは大きいのです。
「制作実績」だけでなく「保守実績」を見るべき
制作会社のWebサイトに「制作実績」は大量に掲載されていても、「保守・運用の実績」が一件も載っていないことがあります。制作実績はあくまで「作った」実績です。制作後も継続してサポートしているかどうかは、制作実績からは読み取れません。
保守契約の継続率を聞くと会社の姿勢がわかる
商談の際に「制作後の保守契約を結んでいるクライアントはどのくらいありますか」と聞いてみてください。保守に力を入れている制作会社であれば、継続率や契約件数を具体的に答えられます。「データとしては出していない」「大半のお客様と保守契約を結んでいます」という曖昧な回答は、保守事業を重視していない証拠です。
もう一つ確認すべきは、保守契約の最低契約期間です。1年縛り、2年縛りの長期契約を前提にしている会社は要注意です。長期縛りは「サービスに自信がないから解約を防ぎたい」という裏の意図が透けます。対応の質に自信がある会社ほど、月単位の契約を提供できます。(自信があるなら縛る必要がないのです)
既存クライアントの声や事例を確認できるかが信頼の分かれ目
保守を継続しているクライアントの声や、具体的な運用事例(月間の対応件数、改善提案の内容など)を公開できる会社は、実際に保守サービスを回している会社です。逆に、制作事例は華やかだが保守に関する情報がゼロの場合、その会社は「作ったら終わり」のビジネスモデルである可能性が高いと判断できます。
制作会社のホームページに「よくある質問」や「サポートページ」が設けられているかも判断材料になります。保守に力を入れている会社は、顧客からの問い合わせを減らすためにFAQを整備しています。サポートに関する情報が一切ない会社は、そもそもサポートの需要が少ない、つまり保守サービスを提供していない可能性が高いと言えます。
WordPressのアップデート対応を聞けば本気度がわかる
ホームページをWordPressで制作する場合、納品後のアップデート対応をどうするかは必ず確認してください。WordPressはCMS(コンテンツ管理システム)の中で世界シェア1位であり、全Webサイトの約43%がWordPressで構築されています(出典 W3Techs WordPress Usage Statistics)。シェアが高い分、サイバー攻撃の標的にもなりやすく、本体・プラグイン・テーマの定期的なアップデートは必須です。
「WordPressの更新は自分でやってください」は実質サポート放棄
納品時に「管理画面のログイン情報をお渡ししますので、更新はご自身でお願いします」と言われるケースがあります。一見、親切に管理権限を渡してくれているように聞こえますが、これは実質的なサポート放棄です。WordPress本体のメジャーアップデートは年に2〜3回、プラグインの更新は月に数回の頻度で発生します。これを「ITに詳しくない中小企業の経営者が自分でやってください」というのは、現実的ではありません。
更新作業自体はボタンを押すだけに見えますが、更新後にサイトが崩れる、プラグインが動かなくなる、画面が真っ白になるといった不具合が発生するリスクがあります。更新前にバックアップを取り、更新後に全ページの表示確認を行い、不具合があれば切り戻す。この一連の作業を「自分でやってください」と言うのは、制作会社としての責任を放棄しているのと同じです。(更新ボタンを押すのは簡単ですが、壊れたときに直すのは専門家の仕事です)
セキュリティ対策の方針が語れない会社に保守は任せられない
「セキュリティ対策はどのようにしていますか」と聞いたとき、具体的な対策内容を説明できるかどうかで、保守の本気度が測れます。WAF(Webアプリケーションファイアウォール)の導入状況、不正アクセスの監視体制、マルウェアスキャンの頻度、バックアップの保存世代数。これらの質問に具体的に答えられる会社は、保守を本業として捉えています。
IPA(情報処理推進機構)が公表する「情報セキュリティ10大脅威」では、Webサイトの改ざんやランサムウェアによる被害が毎年上位にランクインしています(出典 IPA 情報セキュリティ10大脅威 2024)。セキュリティ対策を「よくわからない」「特にやっていない」と答える制作会社にサイトを任せるのは、玄関の鍵を開けっ放しにして出かけるようなものです。
制作前に確認すべきアフターフォローのチェックリスト
ここまで解説したポイントを、制作会社に依頼する前のチェックリストとしてまとめます。すべての項目を満たす必要はありませんが、半数以上に「No」がつく会社は、アフターフォローに期待できないと判断してよいでしょう。
| チェック項目 | 確認方法 | 危険サイン |
|---|---|---|
| 見積書に保守費用の記載がある | 見積書を確認 | 保守の項目自体が存在しない |
| 保守契約の内容が具体的に記載されている | 契約書・サービス説明書を確認 | 「何かあれば対応します」程度の記載しかない |
| 瑕疵担保期間が3か月以上ある | 契約書を確認 | 1か月以下、または記載なし |
| 会社としてのサポート窓口がある | 連絡先を確認 | 担当者の個人連絡先のみ |
| 修正対応の目安日数が明示されている | 商談時に質問 | 「できるだけ早く」としか答えない |
| 保守契約の継続率を答えられる | 商談時に質問 | データがない、曖昧な回答 |
| WordPressの更新対応が保守に含まれている | 契約書・サービス内容を確認 | 「更新はお客様ご自身で」と言われる |
| セキュリティ対策の具体的な方針がある | 商談時に質問 | 「特にやっていない」「よくわからない」 |
| バックアップの取得頻度と保管方法が明示されている | 商談時に質問 | バックアップの話題自体が出てこない |
| サーバー・ドメインの管理権限を顧客に渡す方針がある | 商談時に質問 | 管理権限は制作会社が持ち、顧客には渡さない |
このチェックリストは商談中に使えるよう設計しています。すべての質問に対して明確に回答できる制作会社は、アフターフォローの体制が整っている会社です。逆に、質問を嫌がったり話をそらしたりする会社は、聞かれたくないことがあると判断してください。
「作りっぱなし」にされた場合のダメージは想像以上に大きい
アフターフォローのない制作会社に依頼した結果、どのような被害が発生するのか。「多少不便なだけでしょう」と思うかもしれませんが、実際のダメージは事業レベルで影響します。
サイト改ざんに気づかず放置し顧客の信頼を失う
セキュリティ対策が放置されたWordPressサイトが改ざんされ、訪問者にマルウェアを配布するサイトに変わっていた。こうした事例は珍しくありません。サイトオーナーが改ざんに気づくまで数週間〜数か月かかることもあり、その間にGoogleから「危険なサイト」としてフラグを立てられ、検索順位が大幅に下落します。改ざん被害の復旧には平均して10万〜30万円の費用と、数日〜2週間の時間がかかります。保守費用を「もったいない」と節約した結果、復旧費用で数十倍のコストを支払うことになるのです。
サーバー・ドメインの管理情報が不明で身動きが取れない
制作会社がサーバーやドメインを契約し、管理情報(ログインID、パスワード、契約者情報)を顧客に渡していなかった場合、制作会社との関係が切れた瞬間にサイトの管理が不可能になります。サーバーの管理画面にログインできない、ドメインの更新ができない、SSL証明書の更新ができない。こうした状態に陥った事業者が弊社に相談に来るケースは年間を通じて発生しています。最悪の場合、ドメインが失効して第三者に取得され、自社のURLが使えなくなることもあります。
サイトの修正ができず機会損失が積み重なる
商品の価格変更、新サービスの告知、営業時間の変更、スタッフの入退社。事業を営んでいれば、ホームページの更新が必要な場面は頻繁に訪れます。制作会社のフォローがなく、自社で更新する知識もなければ、サイトの情報はどんどん古くなっていきます。古い情報を掲載したサイトは、顧客からの信頼を損ないます。「電話して確認したら営業時間が違った」「掲載されていた価格と実際の価格が違う」。こうしたクレームが発生すれば、ホームページは集客ツールどころか、信頼を毀損する原因になります。さらに、Googleは情報の鮮度もランキング要因の一つとして評価しています。長期間更新されていないサイトは検索順位が徐々に低下し、新規顧客の流入も減っていきます。修正ができないことの損失は、目に見える形ではなく、じわじわと積み重なるのです。
制作会社選びで「アフターフォロー」を最優先にすべき理由
ホームページの制作会社を選ぶ際、多くの事業者はデザインの質、制作費用、制作期間を重視します。もちろんこれらも重要ですが、最も重視すべきは「納品後のサポート体制」です。理由は単純で、ホームページは制作期間よりも運用期間のほうが圧倒的に長いからです。
制作期間は通常2〜3か月。一方、ホームページの運用期間は5年、10年と続きます。2〜3か月の制作期間だけを重視して会社を選び、その後5年以上続く運用期間のサポートを考えないのは、新車を買うときに「走行性能」よりも「ショールームの雰囲気」で選ぶようなものです。
制作費が安くても、納品後にフォローがなければ、別の業者に保守を依頼する費用が発生します。制作した会社以外が保守を引き継ぐ場合、サイトの構造を理解するための調査費用が追加でかかることもあります。弊社でも他社制作サイトの引き継ぎ案件を多数対応していますが、ドキュメントが一切残されていないケースでは、初期調査だけで1〜2営業日を要することがあります。結果的に、最初からアフターフォロー込みの制作会社に依頼したほうが、トータルコストは安くなるケースがほとんどです。「制作費が安い会社」と「トータルコストが安い会社」は別物です。5年間の運用を見据えた総費用で比較してください。
経済産業省の「DXレポート」でも、中小企業のIT活用においてベンダーとの長期的な関係構築の重要性が指摘されています(出典 経済産業省 DXレポート)。制作会社との関係も同様で、作って終わりの単発取引ではなく、継続的にサポートを受けられるパートナーを選ぶことが、ホームページを事業の武器として活かす第一歩です。
最後に
ホームページ制作会社を選ぶ際、デザインや価格に目が行きがちですが、本当に確認すべきは「作った後に何をしてくれるか」です。契約書に保守の記載があるか、サポート窓口は整っているか、WordPressの更新やセキュリティ対策はどうするのか。これらの質問に対して具体的に答えられる会社こそ、長く付き合えるパートナーです。制作費の安さに飛びついた結果、納品後に放置されて別の業者に駆け込む。このパターンは本当に多く、弊社にも毎月のように「前の制作会社とのトラブルで連絡が取れなくなった」「保守をどこに頼めばいいかわからない」というご相談が寄せられています。
WordPress保守代行サービスの選び方も参考に、信頼できるパートナーを見つけてください。Web管理では、他社が制作したサイトの保守・運用の引き継ぎも対応しています。月額1万円から、サーバー・ドメイン管理、WordPress更新、セキュリティ対策、軽微な修正まで対応可能です。「今の制作会社のフォローに不安がある」「保守をどこに頼めばいいかわからない」というご相談だけでも歓迎です。Webのことは丸投げして、本業に集中できる環境を一緒に作りましょう。



