「WordPressって無料なんですよね?」と社内で聞かれて、うまく答えられなかった経験はないでしょうか。答えは「ソフトウェア自体は無料、しかしサイトを公開して運営するにはお金がかかる」です。この構造を正確に説明できないと、社内で「無料のはずなのに毎月請求が来るのはなぜか」という不毛な議論が発生します。この記事では、WordPressサイトにかかる費用の全体像を、社内説明にそのまま使える形で整理します。
無料なのはWordPress本体のソフトウェアだけ
WordPressはGPLというライセンスで公開されているオープンソースソフトウェアです。誰でも無料でダウンロードし、商用利用も含めて自由に使えます。ライセンス料は一切かかりません(出典 WordPress.org GPL ライセンス)。
無料なのはソフトウェアであって「場所」ではない
WordPressは、サーバーというコンピュータの上にインストールして初めて動きます。この構造を家に例えると分かりやすいです。WordPressは無料でもらえる家具一式、サーバーは土地と建物、ドメインは住所です。家具がタダでも、土地代と住所の登録料は毎年かかります。
「無料ブログ」と混同されているケースが多い
社内で混乱が起きる原因の多くは、WordPress.com という無料でブログを始められるサービスと、自社サーバーに設置する WordPress.org を区別できていないことにあります。企業サイトで使われるのは後者で、こちらはサーバーとドメインの契約が前提です(出典 WordPress.org WordPress について)。
WordPressサイトにかかる費用は4層に分けて説明する
社内説明では、費用を4つの層に分けて示すと理解されやすくなります。
| 層 | 内容 | 費用の目安 | 止めるとどうなるか |
|---|---|---|---|
| ソフトウェア | WordPress本体 | 0円 | 該当なし |
| インフラ | サーバー・ドメイン・SSL | 年間15,000円〜60,000円 | サイトとメールが完全に停止する |
| 制作物 | テーマ・有料プラグイン | 初期0円〜10万円、年間0円〜3万円 | デザイン崩れ・機能停止が起きる |
| 運用保守 | 更新作業・バックアップ・修正対応 | 月額10,000円〜50,000円 | 放置され改ざん・障害のリスクが上がる |
この4層のうち、削れるのは実質的に「運用保守」だけです。そして削った結果どうなるかは、後述します。
インフラ費用は年間1万5千円から6万円が相場
サーバー費用は月額500円〜3,000円が中小企業向けの相場です。ドメインは年間1,500円〜7,000円、SSL証明書はLet’s Encryptなどの無料証明書を使えば0円で済みます。合計すると、年間15,000円〜60,000円のレンジに収まります。(この費用を惜しむ会社はまずありません。問題はいつも保守費用の方です)
テーマとプラグインは無料と有料で明確な差がある
無料テーマでも十分に企業サイトは作れますが、有料テーマは日本語ドキュメントとサポートが付く点が実務上の差になります。有料テーマは買い切り1〜3万円が主流です。プラグインは、フォーム・バックアップ・セキュリティなどの主要機能が無料版で足りることが多く、有料版が必要になるのは高度な機能が要る場合に限られます。
「無料のはずなのに毎月払うのはなぜか」への回答
この質問への回答は1文で足ります。WordPressは無料で配られていますが、放置すると脆弱性を突かれて壊れるソフトウェアだからです。
WordPressは世界中のサイトで使われているため攻撃対象になりやすい
WordPressは世界で最も広く使われているCMSです。利用者が多いということは、攻撃者にとって効率の良い標的だということでもあります。セキュリティベンダーのWordfenceは、WordPressサイトへの攻撃とプラグインの脆弱性情報を継続的に公表しています(出典 Wordfence Blog)。
更新を止めた瞬間から劣化が始まる
WordPress本体・テーマ・プラグインには、定期的にセキュリティ修正が配信されます。これを適用しないまま運用するのは、玄関の鍵を開けっ放しにして出かけるのと同じです。IPAの「情報セキュリティ10大脅威」でも、修正プログラムの未適用による被害は継続的に上位に挙げられています(出典 IPA 情報セキュリティ10大脅威)。
更新は「押すだけ」ではないから工数がかかる
更新ボタンを押すだけなら誰でもできます。実務で工数がかかるのは、更新前のバックアップ取得、更新後の表示確認、不具合が出た場合の切り戻し、プラグイン同士の相性問題の切り分けです。月額保守費用の中身は「押す作業」ではなく「壊れたときに戻せる状態を維持する作業」です。(月額3,000円の保守プランで、この工程が入っているケースは見たことがありません)
自社対応と外注のコストを人件費で比較する
社内説明で最も効くのは、人件費との比較です。
| 対応方法 | 月額コスト | 含まれるもの | リスク |
|---|---|---|---|
| 社内担当者が兼務 | 実質的に人件費の一部 | 更新作業のみになりがち | 退職・異動で引き継がれずブラックボックス化 |
| Web担当者を採用 | 20万円〜35万円 | 更新・改善・分析まで | 更新作業だけでは仕事量が足りない |
| 制作会社の保守契約 | 30,000円〜50,000円 | 会社により大きく異なる | 中身が不透明なケースがある |
| 運用保守専門会社に外注 | 10,000円〜30,000円 | 更新・バックアップ・軽微修正 | 対応範囲を契約前に確認する必要がある |
ホームページの更新作業は、専任者を雇うには少なすぎ、片手間でやるには専門的すぎる中間の業務です。この中途半端さが、多くの中小企業でWeb担当者不在問題を生んでいます。
兼務担当者の「実質コスト」は見えていないだけで発生している
総務や営業事務の方が兼務でサイトを更新している場合、費用は0円に見えます。しかし月に5時間使っているなら、その人の時給×5時間のコストが確実に発生しています。加えて、その人が退職した瞬間にログイン情報ごと失われるリスクを抱えています。
社内説明で使える1枚の説明フレーズ
会議で聞かれたときに、そのまま使える説明を用意します。
- WordPressというソフト自体は無料です
- ただしサイトを公開するには、サーバー(土地)とドメイン(住所)の契約が必要で、これが年間2〜5万円かかります
- さらにWordPressは放置すると脆弱性を突かれて改ざんされるため、毎月の更新作業とバックアップが必要です
- この更新作業を社内でやると担当者の時間が取られ、退職時に引き継げないリスクがあります
- 外注すると月額1万円〜3万円で、専門知識と復旧体制ごと確保できます
「無料だからタダで運営できる」という説明でサイトを立ち上げると、数年後に更新も保守もされていない状態のサイトが残ります。改ざん被害からの復旧費用は、数年分の保守費用を軽く超えます。
費用を削るなら保守ではなく制作費と契約内容を見直す
コストを下げたい場合、削るべきは保守費用ではありません。使っていない有料プラグイン、機能過多のサーバープラン、内容が不透明な高額保守契約が先です。月5万円の保守契約の中身を確認したら、プラグインの自動更新設定だけだったというケースは実在します。(それは保守ではなく、請求書の自動発行です)
最後に
WordPressが無料なのはソフトウェア部分だけで、サイトを安全に公開し続けるには、インフラ費用と保守費用が必要です。この構造を社内で正しく共有できていれば、「無料のはずなのに」という議論に時間を使わずに済みます。
Web管理では、月額1万円からWordPressサイトの運用保守を代行しています。「今払っている保守費用が妥当か診断してほしい」「社内説明用に費用の内訳を整理してほしい」といったご相談も歓迎です。Webのことは丸投げして、本業に集中できる環境を一緒に作りましょう。

