プラグインの更新通知が出ていると、つい「更新」ボタンをまとめて押してしまいがちです。しかし更新は、サイトが壊れる可能性が最も高い瞬間でもあります。この記事では、更新ボタンを押す前に1分だけ実行しておくべき確認手順と、それを守るだけで事故率がどれだけ下がるかを、運用保守の現場視点で解説します。
更新前の1分は「戻せる状態」を作る時間
結論から書きます。更新前にやるべきことは、バックアップの確認、更新内容の確認、実施タイミングの3点です。この3点を確認する時間が、およそ1分です。
更新作業の本質は「壊すこと」ではなく「戻せること」
プラグインの更新で不具合が出ること自体は、確率としてゼロにできません。何百人もの開発者が作ったプラグインが、それぞれ独立に更新される以上、相性の問題は必ず発生します。プロとアマチュアの差は、不具合を出さないことではなく、出たときに5分で元に戻せるかどうかです。(更新して壊れたが戻せない、というのが最悪のパターンです)
1分の儀式の全体像
| 手順 | 所要時間 | 確認内容 |
|---|---|---|
| バックアップの存在確認 | 20秒 | 直近のバックアップ日時を見る |
| 更新内容の確認 | 20秒 | バージョン番号の変化と更新履歴を見る |
| タイミングの確認 | 10秒 | 今すぐ確認できる時間帯か判断する |
| 更新前の表示確認 | 10秒 | トップページとフォームを開いておく |
バックアップは「取っているか」ではなく「いつのものか」を見る
バックアップの確認で見るべきは、設定の有無ではなく最新取得日時です。
1ヶ月前のバックアップは実質的に使えない
バックアップが1ヶ月前のものだった場合、それを使って復元すると1ヶ月分の投稿・問い合わせ・商品情報が消えます。復元できるのに使えないバックアップという、最も歯がゆい状態になります。更新前のバックアップは、その日のものである必要があります。
確認すべき3つのバックアップ経路
- バックアッププラグイン(UpdraftPlus・BackWPupなど)の最終実行日時
- レンタルサーバーの自動バックアップ機能の保持期間と最新日
- 保守会社が取得しているバックアップの有無と頻度
WordPress公式ドキュメントも、更新やカスタマイズの前にバックアップを取ることを推奨しています(出典 WordPress Developer Resources Backing Up Your WordPress Site)。
ファイルとデータベースの両方が揃っているか確認する
バックアップには、画像やテーマファイルなどの「ファイル」と、投稿内容や設定を保存する「データベース」の2種類があります。片方だけでは復元できません。バックアッププラグインの設定で、両方が対象になっているかを確認してください。(データベースだけバックアップしていて、画像がすべて消えた事例があります)
バックアップの保存先がサーバー内だけになっている場合、サーバー障害で本体もバックアップも同時に失われます。外部ストレージへの保存を必ず設定してください。
更新内容はバージョン番号の桁で危険度を判断する
更新画面には、現在のバージョンと更新後のバージョンが表示されます。この数字の変化で、危険度がある程度読めます。
メジャーバージョンの更新は仕様変更の可能性が高い
バージョン番号は、通常「メジャー.マイナー.パッチ」の3桁構成です。1桁目が変わる更新は、内部構造の大きな変更を伴うことが多く、慎重な対応が必要です。
| バージョンの変化 | 種類 | 危険度 | 推奨対応 |
|---|---|---|---|
| 5.2.1 から 5.2.2 | パッチ更新 | 低い | 通常どおり更新して問題ない |
| 5.2.1 から 5.3.0 | マイナー更新 | 中程度 | 更新後に表示と機能を確認する |
| 5.2.1 から 6.0.0 | メジャー更新 | 高い | テスト環境での事前検証が望ましい |
更新履歴に「セキュリティ修正」とあれば優先度が上がる
プラグイン一覧の「バージョン◯◯の詳細を表示」から更新履歴を確認できます。セキュリティ修正が含まれる場合は、多少のリスクを取ってでも即座に適用すべきです。脆弱性情報が公開されると、その日のうちに攻撃が始まることも珍しくありません(出典 Wordfence Blog)。
サイトの中核機能に関わるプラグインは特に慎重に扱う
フォーム・決済・予約・会員機能など、止まると売上に直結するプラグインは、更新の危険度が実質的に一段階上がります。表示崩れなら見た目の問題で済みますが、フォームが動かなくなると問い合わせが来ていないのか、来ているのに届いていないのか区別できない状態になります。これが最も気づきにくく、損害が大きい事故です。
更新するタイミングは平日の午前中が最適
いつ更新するかは、技術の話ではなく体制の話です。
金曜の夕方と連休前は絶対に避ける
金曜18時に更新して不具合が出た場合、対応できる人がいないまま週末を越えることになります。サーバー会社のサポート窓口も、制作会社も、土日は動きません。更新は「直後に確認でき、問題があれば当日中に対応できる時間帯」に実施するのが鉄則です。
アクセスの少ない時間帯を選ぶ
Google Analyticsで曜日別・時間帯別のアクセスを確認すると、自社サイトの閑散時間が分かります。BtoBサイトなら深夜と早朝、飲食店なら開店前がアクセスの谷になりやすい時間帯です。ただし深夜の更新は、不具合発生時に対応できる人がいないという別の問題があるため、実務では平日の午前中が最もバランスが良い選択です。
キャンペーン期間中・繁忙期は更新を止める判断も必要
広告を出稿している期間や、季節の繁忙期にサイトが止まると、損害が通常時の何倍にもなります。セキュリティ修正でない限り、更新を数週間延期する判断は合理的です。
更新後の確認は3箇所を必ず開く
更新ボタンを押した後の確認も、あわせて習慣化してください。
トップページ・下層ページ・問い合わせフォームを開く
- トップページが正常に表示されるか(レイアウト崩れ・画像の欠落)
- 下層ページを2〜3ページ開いて表示を確認する
- 問い合わせフォームを開き、実際にテスト送信してメールが届くか確認する
- スマートフォンでも表示を確認する(PCだけでは崩れに気づかない)
- 管理画面の他メニューが正常に開くか確認する
フォームのテスト送信は毎回やる価値がある
更新後の不具合で最も多く、最も気づきにくいのがメール送信の停止です。表示は正常なのに、送信ボタンを押しても管理者にメールが届かない状態は、数ヶ月気づかれないことがあります。その間に来ていたはずの問い合わせは、すべて失われています。テスト送信は30秒で終わります。
不具合が出たら該当プラグインを停止して切り戻す
1つずつ更新していれば、直前に更新したプラグインが原因だと即座に分かります。まずそのプラグインを停止してサイトが復旧するかを確認してください。復旧すれば原因は確定です。その後、旧バージョンへの差し戻しか、代替プラグインへの移行を検討します。
自動更新をすべてオンにしている場合、深夜に勝手に更新されて朝サイトが壊れているという事態が起こります。セキュリティ修正が中心のWordPress本体のマイナー更新は自動でよいですが、プラグインの自動更新は対象を絞ってください。
プラグインの数を減らすことが最も効く事前対策
更新事故を根本的に減らす方法は、更新対象そのものを減らすことです。
使っていないプラグインは停止ではなく削除する
停止中のプラグインもファイルはサーバー上に残っており、脆弱性があれば攻撃対象になります。半年以上使っていないプラグインは、バックアップを取った上で削除してください。プラグインの数が20個から12個になれば、更新の手間も事故の確率も比例して下がります。
長期間更新されていないプラグインは乗り換えを検討する
プラグインの詳細画面で「最終更新」の日付を確認できます。2年以上更新されていないプラグインは、開発が止まっている可能性が高く、脆弱性が発見されても修正されません。更新されないプラグインは、更新事故は起きませんが、代わりに侵入されます。
同じ機能のプラグインを重複して入れない
SEO系・キャッシュ系・セキュリティ系は、複数入れると互いに干渉して不具合の原因になります。それぞれ1つに絞ってください。プラグイン一覧を眺めて、機能が重複しているものがないか定期的に確認する習慣をつけると効果的です。
最後に
プラグインの更新は、放置すればセキュリティリスク、無準備に実行すれば表示事故という、板挟みの作業です。しかし更新前の1分でバックアップ日時・バージョンの桁・実施タイミングを確認するだけで、事故の大半は「戻せば済む話」に変わります。重要なのは慎重に更新することではなく、いつでも戻せる状態を維持することです。
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