制作会社を変える、保守会社を乗り換える、社内の担当者が交代する。このタイミングで必要な情報を受け取り損ねると、後から取り返すのに数ヶ月かかることがあります。最悪の場合、サイトを作り直すしかなくなります。この記事では、引き継ぎ時に必ず受け取るべき情報を、重要度順のチェックリストとして整理します。
最優先はドメインとサーバーの管理権限
受け取るべき情報には優先順位があります。ドメインとサーバーの権限を失うと、他のすべてが意味をなさなくなります。
ドメインの管理権限は取り返しがつかない
ドメインの管理画面にアクセスできなければ、サーバーを移転することもメールの設定を変えることもできません。契約者名義が制作会社になっている場合、移管に相手の協力が必須になります。関係が悪化してから交渉を始めると、事実上不可能になることがあります。(店舗の住所と電話番号を他人に握られている状態です)
ドメイン関連で受け取るべき情報
| 項目 | 内容 | なくなるとどうなるか |
|---|---|---|
| ドメイン管理会社名 | お名前.com、ムームードメイン等 | どこで契約しているか分からない |
| 管理画面のログイン情報 | ID・パスワード | DNS設定・更新手続きができない |
| 登録者名義 | WHOIS上の登録者 | 移管時に相手の同意が必要になる |
| 更新期限 | 次回更新日 | 失効に気づかずサイトとメールが停止 |
| 支払い方法 | 登録カードまたは請求先 | カード期限切れで自動更新が失敗する |
| 認証鍵(AuthCode) | 他社への移管に必要なコード | ドメイン移管ができない |
サーバー関連で受け取るべき情報
- レンタルサーバー会社名と契約プラン
- サーバー管理画面のログイン情報
- 契約更新日と支払い方法
- FTPアカウント情報(ホスト名・ユーザー名・パスワード)
- データベースの接続情報(DB名・ユーザー名・パスワード)
- SSL証明書の種類と更新方法(無料証明書か有料か)
- メールアカウントの一覧と各アカウントのパスワード
サーバーの管理画面にログインできれば、FTPやデータベースの情報は自分で再発行できます。逆に管理画面のログイン情報がなければ、他の情報を持っていても何もできません。優先度を間違えないでください。
WordPressと制作データも必ず確保する
インフラの次は、サイトの中身です。
WordPressの管理者アカウントを自社名義で作る
既存の管理者アカウントのパスワードを教えてもらうのではなく、自社の担当者名義で新しい管理者アカウントを発行してもらってください。引き継ぎ完了後、制作会社のアカウントを削除できる状態にしておくことが重要です。
テーマとプラグインのライセンス情報
有料テーマや有料プラグインを使っている場合、そのライセンスが誰の名義で購入されたものかを確認してください。制作会社の名義で購入されている場合、契約終了後に更新が受けられなくなり、セキュリティ修正が届かなくなります。ライセンスが切れたテーマは、更新できないまま放置されることになります。
デザインの元データを受け取る
ロゴのAI・EPSファイル、写真の元データ、デザインカンプのデータは、次の制作会社に引き継ぐ際に必要になります。特にロゴの元データがないと、名刺や印刷物の制作時に困ります。
- ロゴデータ(AI形式・SVG形式・透過PNG)
- 撮影した写真の元データ(圧縮前の高解像度版)
- 使用しているフォントの名称とライセンス
- デザインデータ(Figma・XD・Photoshop等)
- イラスト・アイコンの素材と利用ライセンス
素材の利用ライセンスの確認は特に重要
制作会社が有料素材サイトのライセンスで購入した写真やイラストは、契約上その制作会社にしか使用権がない場合があります。引き継ぎ後にサイトを改修する際、それらの素材を使い続けてよいのかを明確にしておいてください。
アクセス解析と外部サービスの権限も忘れずに
見落とされやすいのが、サイト本体以外のサービスです。
Google関連サービスの権限を自社アカウントに移す
Google Analytics・Search Console・Googleビジネスプロフィール・Google広告のアカウントが、制作会社のGoogleアカウントで管理されているケースがよくあります。これらの権限を失うと、過去のデータがすべて見られなくなります。アクセス解析のデータは、後から復元できません。
Search Consoleについては、自社のGoogleアカウントに所有者権限を追加してもらうのが確実です(出典 Google 検索セントラル Search Console を使ってみる)。
移行すべき外部サービスの一覧
| サービス | 失うと起こること | 対応 |
|---|---|---|
| Google Analytics | 過去のアクセスデータが見られない | 自社アカウントに管理者権限を追加 |
| Search Console | 検索状況と警告通知が受け取れない | 自社アカウントを所有者に追加 |
| Googleビジネスプロフィール | 店舗情報の修正ができない | オーナー権限の移譲を申請 |
| Google広告 | 出稿履歴とデータが失われる | アカウントのリンク解除と権限移譲 |
| SNSアカウント | 投稿・修正ができない | 管理者権限の付与またはパスワード変更 |
| メール配信サービス | 顧客リストが失われる | アカウント移譲またはリスト書き出し |
| 予約システム | 予約データにアクセスできない | 契約者変更手続き |
バックアップの保存先も確認する
バックアップが制作会社の管理するクラウドストレージに保存されている場合、契約終了と同時にアクセスできなくなります。引き継ぎ時に最新のバックアップ一式を受け取り、自社管理の保存先を新たに設定してください。
引き継ぎ時にやってはいけないこと
手順を誤ると、情報を受け取れないまま関係が終わります。
契約解除を伝える前に情報を確保する
解約の意思を伝えてから情報を求めると、対応が後回しにされたり、拒否されたりすることがあります。引き継ぎ資料の受け取りを完了してから、解約の話を進めるのが実務上の鉄則です。ただし、契約書に定められた解約予告期間には注意してください。
口約束で済ませない
「必要になったら渡します」という口頭の約束は、担当者の異動や会社の廃業で無効になります。引き継ぎ資料はデータで受け取り、自社のサーバーやクラウドに保管してください。
もらった情報が正しいか必ず検証する
受け取ったログイン情報は、その場で実際にログインして動作を確認してください。パスワードが古いままだった、権限が足りなかった、というのは頻繁に起こります。関係が続いている間なら、すぐ確認できます。
- ドメイン管理画面に実際にログインしてみる
- サーバー管理画面にログインし、契約内容を確認する
- WordPressに新しい管理者アカウントでログインする
- FTP接続を試してファイル一覧が見えるか確認する
- Google Analyticsを自社アカウントで開いてデータが見えるか確認する
- 受け取ったバックアップファイルが破損していないか確認する
情報が受け取れない場合の対処
すでに関係が悪化している、または連絡が取れない場合の現実的な選択肢です。
ドメインだけは最優先で確保を試みる
ドメイン管理会社に直接連絡し、登録者名義が自社であることを証明できれば、パスワードの再発行や名義確認に応じてもらえる場合があります。登記簿謄本など、名義を証明する書類を用意してください。
制作会社が廃業している場合
連絡が取れない場合、ドメイン管理会社とサーバー会社に直接事情を説明し、契約者としての立場を証明する方法を探ることになります。支払いを自社が行っていた証拠(振込記録・請求書)が有効な材料になります。
最悪の場合はドメインを取り直してサイトを作り直す
どうしても権限が回復できない場合、新しいドメインでサイトを作り直すことになります。この場合、検索評価はゼロからのやり直しで、名刺やパンフレットの刷り直しも発生します。この事態を避けるためだけでも、平時のうちに情報を自社で保管しておく価値があります。
最後に
引き継ぎで受け取るべき情報の優先順位は明確です。ドメインの管理権限、サーバーの管理権限、WordPressの管理者アカウント、Google関連サービスの権限。この4つを押さえていれば、他の情報は後からでも再取得できる可能性があります。逆にこの4つを失うと、打つ手がなくなります。
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