レンタルサーバーから「PHPのバージョンを上げてください」「旧バージョンの提供を終了します」という案内が届いたとき、意味が分からず放置しているケースが非常に多くあります。しかしPHPは、WordPressを動かしている土台そのものです。放置すればいずれサイトが動かなくなり、慌てて上げれば真っ白になります。この記事では、案内が来たときの正しい進め方を解説します。
PHPの更新は放置も即実行もどちらも危険
結論から書きます。PHPのバージョンアップは必要な作業ですが、事前確認なしにボタンを押すとサイトが表示されなくなります。正しい手順は、対応状況の確認・バックアップ・実行・即時確認の4段階です。
PHPはWordPressを動かしているプログラミング言語
WordPressはPHPというプログラミング言語で書かれており、サーバー上のPHPが実行することでページが表示されます。PHPはサイトの土台であり、土台のバージョンが変われば上に乗っているものの動作も変わります。(家の基礎を入れ替える工事に近く、上物の状態を確認せずに始めるものではありません)
サポートが終了したPHPは修正が提供されなくなる
PHPには公式のサポート期限が定められており、期限を過ぎたバージョンにはセキュリティ修正が提供されなくなります。現在サポートされているバージョンとサポート終了済みのバージョンは、PHP公式サイトで公開されています(出典 PHP Supported Versions)。
サーバー会社は期限を切って強制的に切り替える
レンタルサーバー各社は、サポート終了したPHPの提供を段階的に打ち切ります。案内を無視し続けると、ある日サーバー側で強制的に新バージョンへ切り替えられ、準備していないサイトは何の前触れもなく真っ白になります。案内が来た時点が、準備できる最後のタイミングです。
バージョンを上げると壊れる原因は古いテーマとプラグイン
何が壊れるのかを理解しておくと、確認すべき箇所が絞れます。
新しいPHPで廃止された書き方が使われている
PHPはバージョンが上がるたびに、古い書き方の一部を廃止します。何年も更新されていないテーマやプラグインには、廃止された書き方が残っていることがあります。この状態で新しいPHPに切り替えると、処理が止まってページが表示されません。
壊れやすい順序
| 対象 | 危険度 | 理由 |
|---|---|---|
| 制作会社の独自開発テーマ | 最も高い | 更新されておらず古い書き方が残りやすい |
| 2年以上更新のないプラグイン | 高い | 開発が止まっており新PHPに未対応 |
| 親テーマを直接編集した箇所 | 高い | 制作時のまま更新されていない |
| 市販テーマ(更新中) | 低い | 開発元が新PHPに追従している |
| WordPress本体 | 低い | 最新版に更新していれば対応済み |
WordPress本体を先に最新にしておく
PHPを上げる前に、WordPress本体を最新版に更新してください。古いWordPressは新しいPHPに対応していないため、本体が古いままPHPだけ上げると確実に問題が起きます。順番はWordPress本体、プラグイン、テーマ、最後にPHPです。
実行前に確認すべき5項目
作業前のチェックです。ここを飛ばすと復旧作業になります。
プラグインとテーマの更新状況を確認する
- WordPress本体が最新版になっているか
- 更新可能なプラグインとテーマがすべて更新済みか
- 2年以上更新されていないプラグインが残っていないか
- 使っていないプラグインとテーマを削除したか
- テーマが独自開発の場合、制作会社に対応可否を確認したか
PHP互換性チェックのプラグインで事前診断する
PHP Compatibility Checker のようなプラグインを使うと、インストール済みのテーマとプラグインが指定したPHPバージョンで動作するかを事前に診断できます。完全ではありませんが、明らかに問題のある箇所を先に特定できます。
バックアップは必ず取得する
ファイルとデータベースの両方をバックアップし、保存先がサーバー外になっていることを確認してください。PHPのバージョンはサーバー管理画面から戻せますが、戻す判断ができるのは、戻せる状態を確保している場合だけです。
実行する時間帯を選ぶ
平日の午前中など、問題が起きたときにすぐ対応できる時間帯を選んでください。金曜の夕方や連休前は避けます。作業自体は数分ですが、問題が起きた場合の対応に時間が必要です。
PHPのバージョン変更はサーバー管理画面から行うため、WordPressのバックアッププラグインでは元に戻せません。サーバー側の設定変更とWordPress側の復旧は別の作業だと理解しておいてください。
実行手順と直後に確認すべき箇所
実際の作業です。
サーバー管理画面から変更する
- サーバーの管理画面にログインする
- PHPバージョン設定またはPHP Ver.切替のメニューを開く
- 対象ドメインを選び、推奨されている新しいバージョンを指定する
- 変更を保存する(反映は数秒から数分)
- ブラウザでサイトを開いて表示を確認する
確認は5箇所を必ず開く
- トップページの表示とレイアウト
- 下層ページを2〜3ページ開く
- WordPress管理画面にログインできるか
- 問い合わせフォームからテスト送信してメールが届くか
- スマートフォンでも表示を確認する
いきなり最新版ではなく一段階ずつ上げる
現在のバージョンが大幅に古い場合、いきなり最新版に飛ばすと問題の切り分けが困難になります。一段階ずつ上げて都度確認する方が、原因の特定が容易です。急ぐ理由がないなら、段階的に進めるのが安全です。
サイトが真っ白になった場合の対処
問題が起きた際の初動です。
まずPHPのバージョンを元に戻す
サーバーの管理画面から、変更前のバージョンに戻してください。これでサイトが復旧すれば、原因はPHPの互換性で確定です。復旧を優先し、原因調査はその後で行います。
原因のプラグインを特定する
元に戻した状態で、疑わしいプラグインを1つずつ停止しながら、再度PHPを上げて確認していきます。手間はかかりますが、これが最も確実な切り分け方法です。管理画面にも入れない場合は、FTPでプラグインのフォルダ名を変更して無効化します。
原因が独自テーマの場合は改修か乗り換えを判断する
制作会社の独自テーマがPHPに対応していない場合、選択肢は改修依頼か市販テーマへの乗り換えです。改修費用が高額になる場合、この機会に更新され続ける市販テーマへ移行した方が、長期的なコストは下がります。(数年ごとに同じ問題で費用が発生する構造から抜けられます)
サポートが終了したPHPを使い続ける選択肢はない
サポート終了済みのバージョンには、脆弱性が見つかっても修正が提供されません(出典 PHP Unsupported Branches)。IPAも、修正プログラムを適用しないまま運用することのリスクを継続的に注意喚起しています(出典 IPA 情報セキュリティ10大脅威)。動くから問題ないという判断は、サイトが動くことと安全であることを混同しています。
最後に
PHPのバージョンアップは、放置すればいずれ強制的に切り替えられ、無準備に実行すればサイトが止まる作業です。WordPress本体とプラグインを先に最新化し、バックアップを取り、対応できる時間帯に一段階ずつ上げる。この順序さえ守れば、事故はほぼ防げます。案内が届いた時点で動き始めてください。
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