サーバー移転が怖いと言われるのは、失敗するとサイトとメールが同時に止まるからです。しかし手順自体は確立しており、事前準備さえ正しければ、無停止で完了させることも可能です。この記事では、移転の全体像と、実務で事故になりやすい箇所を工程順に解説します。
移転の成否はDNS切り替え前の準備で決まる
結論から書きます。サーバー移転で失敗する会社は、DNSを切り替えてから問題に気づきます。正しい手順では、切り替え前に新サーバーで完全に動作する状態を作り、確認まで済ませます。
移転の基本的な流れ
- 新サーバーを契約し、旧サーバーのデータを複製する
- DNSを切り替えずに、新サーバー上で表示と動作を確認する
- メールアカウントを新サーバー側に作成する
- DNSのTTL(切り替わりの速さを決める値)を短くしておく
- DNSを新サーバーへ切り替える
- 切り替え後、サイト・メール・フォームを確認する
- 問題がなければ旧サーバーを一定期間残して解約する
DNS切り替えは全世界に一斉反映されない
DNSの変更は、世界中のネットワーク機器に順次伝わる仕組みです。反映には数時間から48時間程度かかり、その間は旧サーバーを見る人と新サーバーを見る人が混在します。この期間を切り替え期間として設計に織り込む必要があります。
切り替え期間中は両方のサーバーを生かしておく
旧サーバーを先に解約すると、まだDNSが切り替わっていない人からサイトが見えなくなります。旧サーバーは最低でも1週間、メールを扱っている場合は2週間程度残しておいてください。(数千円を惜しんで、見えない期間を作る必要はありません)
最大の事故はメールの取りこぼし
サイトの移転より、メールの方が事故率が高く、被害も大きくなります。
切り替え期間中のメールは両方のサーバーに届く
DNSが切り替わっていく途中では、送信元によって旧サーバーに届くメールと新サーバーに届くメールが分かれます。新サーバーだけを見ていると、旧サーバーに届いた問い合わせに気づかないまま解約することになります。
メール移行で確認すべき項目
- 旧サーバーの全メールアカウントを一覧化したか
- 各アカウントのパスワードを把握しているか
- 転送設定・自動返信設定を控えたか
- 過去のメールデータを新サーバーへ移行するか、ローカルに保存するか決めたか
- 切り替え後、旧サーバーの受信箱を数日間チェックする担当を決めたか
- 社内PC・スマートフォンのメールソフト設定を変更する手順を用意したか
社員のメールソフト設定変更を軽視しない
サーバーが変わると、全社員のPCとスマートフォンでメールの受信サーバー設定を変更する必要があります。10人いれば10台以上の設定変更です。この作業を移転当日に慌てて始めると、その日は業務が止まります。手順書を事前に配布してください。
メールをGmailやMicrosoft 365で運用している場合、サーバー移転してもメールは影響を受けません。ただしDNSのMXレコードを新サーバー側の初期値で上書きすると、メールが全停止します。移転時に最も多い事故のひとつです。
移転前に確認すべきサーバー仕様の差
サーバーが変われば環境も変わります。移転前に確認する項目です。
| 確認項目 | 確認する理由 |
|---|---|
| PHPのバージョン | 新サーバーの方が新しいとテーマが動かない場合がある |
| データベースの種類とバージョン | 移行データの互換性に影響する |
| ディスク容量 | 画像が多いサイトは容量不足になることがある |
| メールアカウント数の上限 | プランによって作成できる数が異なる |
| SSL証明書 | 新サーバーで再取得が必要になる |
| 独自の設定ファイル | リダイレクトやアクセス制限の設定が引き継がれない |
| Cron設定 | 定時実行の設定は自動移行されない |
リダイレクト設定は移行されないことが多い
過去のリニューアルで設定した旧URLからのリダイレクトは、サーバーの設定ファイルに書かれていることがあります。この設定は自動では移行されません。移転後に古いURLがすべて404になり、検索経由の流入が消えるという事故が起こります。
SSL証明書は新サーバーで取り直す
無料のSSL証明書はサーバーに紐づいているため、新サーバーで改めて設定します。DNS切り替え後でないと発行できない場合があるため、切り替え直後に証明書エラーが出る時間帯が発生し得ることを織り込んでください。
URLが変わらない移転なら検索評価への影響はほぼない
SEOへの影響を心配される方が多いのですが、条件によって話が変わります。
ドメインが同じなら評価は維持される
サーバーだけを変えてURLが変わらない場合、検索評価への影響は基本的にありません。Googleもホスティング変更時の手順を公開しており、正しく行えば問題ないとしています(出典 Google 検索セントラル ウェブ ホスティングの変更と SEO)。
ドメインも変わる場合はリダイレクト設計が必須
移転と同時にドメインを変える場合は、全ページを1対1で新URLへリダイレクトする設計が必要です。トップページにまとめて転送すると、個別ページの評価は引き継がれません(出典 Google 検索セントラル サイト・ホームページ移行について)。
移転直後の順位変動は様子を見る
移転後に一時的な順位変動が起きることがありますが、サイトの内容が変わっていなければ通常は戻ります。変動に慌てて追加の変更を加えると、原因が増えて切り分けができなくなります。
移転後に必ず確認する項目
切り替えが終わったら、確認して初めて完了です。
切り替え当日に確認する
- トップページと主要な下層ページが表示されるか
- SSLの鍵マークが表示されるか
- 問い合わせフォームからテスト送信し、メールが届くか
- 各メールアカウントで送受信テストを行う
- WordPress管理画面にログインできるか
- 過去のリニューアルで設定した旧URLが正しく転送されるか
1週間後に確認する
旧サーバーの受信箱に届いているメールがないかを確認します。同時に、Search Consoleでクロールエラーが増えていないか、アクセス解析で流入が急減していないかを見ます。ここまで確認して問題がなければ、旧サーバーを解約してよい状態です。
WordPressの移行手順は公式にも整理されている
WordPressの移行そのものについては、公式ドキュメントに手順がまとまっています(出典 WordPress.org Migrating WordPress)。移行プラグインを使う方法もありますが、サイト規模が大きい場合は失敗しやすく、手動での移行が確実です。
最後に
サーバー移転が怖いのは、失敗するとサイトとメールが同時に止まり、しかも復旧を自社で判断できないからです。しかしDNS切り替え前に新サーバーで動作確認を済ませ、旧サーバーを一定期間残し、メール設定の変更手順を用意しておけば、事故の大半は起きません。手順よりも準備の丁寧さで決まる作業です。
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