WordPressの投稿画面が数年前から新しい形式になり、使いにくいからとClassic Editorプラグインで元の画面に戻したまま運用している会社は少なくありません。しかし旧エディタは公式のサポート期限が延長され続けているだけの状態であり、いつまでも安全とは限りません。この記事では、移行すべきかどうかの判断基準と、実務的な切り替えの進め方を解説します。
旧エディタは延命措置であって標準ではない
まず現状を正確に把握します。
ブロックエディタがWordPressの標準
WordPress 5.0以降、投稿画面の標準はブロックエディタです。文章・画像・見出し・表などを「ブロック」という単位で組み立てる形式で、公式ドキュメントも整備されています(出典 WordPress.org WordPress Block Editor)。
Classic Editorはプラグインによる延命
旧エディタを使い続けるには、Classic Editorというプラグインが必要です。WordPress公式はこのプラグインのサポート期限を延長し続けていますが、これは「必要な人がまだ多いから延長している」のであって、恒久的に維持される保証ではありません。(延長された猶予期間は、いつか終わる前提のものです)
新しい機能は旧エディタには来ない
WordPressの開発は、ブロックエディタを前提に進んでいます。テーマの新機能、デザイン編集機能、パターン機能などは、すべてブロックエディタ側で提供されます。旧エディタを使い続けるということは、今後追加される機能をすべて受け取らないという選択です。
移行を急がなくてよいケースと急ぐべきケース
一律に移行すべきとは言いません。判断基準を示します。
| 状況 | 判断 | 理由 |
|---|---|---|
| お知らせを月数回更新する程度 | 移行して問題ない | 覚える操作が少なく、慣れれば早い |
| 制作会社が独自の入力欄を組んでいる | 制作会社に確認してから | カスタムフィールドの表示が変わる場合がある |
| 過去記事にHTMLを直接書き込んでいる | 慎重に検証してから | 編集時にレイアウトが崩れる可能性 |
| テーマがブロックエディタ非対応 | テーマの更新か変更が先 | 表示が崩れる原因になる |
| 複数人が毎日投稿している | 移行時期を計画する | 全員の教育期間が必要 |
| 数年間ほぼ更新していない | 移行して問題ない | 影響範囲が小さい |
既存の記事は移行しても壊れない
誤解されやすい点ですが、ブロックエディタに切り替えても公開済みの記事の表示は変わりません。変わるのは編集画面だけです。旧エディタで書かれた記事は「クラシック」というひとつのブロックとして扱われ、そのまま表示されます。
編集画面を開いた瞬間に変換されるわけでもない
過去記事を開いても、自動でブロックに分解されることはありません。「ブロックへ変換」を明示的に選んだときだけ変換されます。この変換操作が、レイアウト崩れの唯一の危険ポイントです。制作会社が組んだHTMLが入っているページでは、変換を実行しないでください。
制作会社がカスタムHTMLで作り込んだ固定ページは、ブロックへ変換すると装飾が失われることがあります。そうしたページは「クラシック」ブロックのまま維持するか、テキストエディタで編集してください。
ブロックエディタで実務上できるようになること
移行の利点を、運用の観点で整理します。
表や2カラムのレイアウトがHTMLなしで組める
旧エディタでは、表を作るのにHTMLを書くかプラグインを入れる必要がありました。ブロックエディタには表ブロック・カラムブロックが標準で用意されており、HTMLを知らない担当者でもレイアウトを組めるようになります。これは更新業務を社内に戻すうえで大きな差になります。
よく使う構成を再利用ブロックとして保存できる
お知らせの定型フォーマット、キャンペーンの告知枠、注意書きのデザインなどを再利用ブロックとして登録しておくと、毎回同じ体裁で投稿できます。担当者が変わっても品質が揃うため、属人化の解消に有効です。
スマートフォン表示の崩れが起きにくい
ブロックエディタで組んだレイアウトは、標準でスマートフォン表示に対応します。旧エディタで手書きしたHTMLの表が画面からはみ出す、といった事故が減ります。
移行の進め方は段階を踏む
いきなり全社で切り替えるのは避けてください。
移行の手順
- バックアップを取得する
- WordPress本体・テーマ・プラグインを最新にする
- テーマがブロックエディタに対応しているか確認する
- Classic Editorの設定で「ユーザーがエディタを切り替えられる」ようにする
- 新規投稿を1本、ブロックエディタで作成して表示を確認する
- 問題がなければ既定のエディタをブロックエディタに変更する
- 一定期間はClassic Editorを残し、必要時に戻せる状態にしておく
いきなりプラグインを削除しない
Classic Editorプラグインは、設定でエディタを切り替えられるようになっています。削除せず、既定をブロックエディタにするだけにしてください。問題が起きたときに、記事単位で旧エディタに戻せます。数ヶ月運用して問題がないと確認できてから削除を検討します。
過去記事は無理に変換しない
公開済みの記事は、表示に問題がなければそのままで構いません。変換作業には手間と崩れのリスクがあり、得られるものはほとんどありません。新しく書く記事からブロックエディタを使う、という運用で十分です。
担当者への説明は3つのブロックだけで足りる
覚える必要があるのは、段落・見出し・画像の3つのブロックです。この3つで通常のお知らせは書けます。表やカラムは、必要になったときに覚えれば問題ありません。最初にすべてを教えようとすると、使いにくいという印象だけが残ります。
移行せずに使い続ける場合のリスク管理
事情があって移行できない場合の対応です。
Classic Editorのサポート状況を年1回確認する
プラグインのサポート期限は、WordPress公式が随時アナウンスしています。年に1度は状況を確認し、終了が近づいた際に慌てないようにしてください。
テーマがブロックエディタ前提に変わる可能性がある
市販テーマの多くは、更新のたびにブロックエディタ対応を進めています。テーマ側が旧エディタ対応を打ち切った場合、プラグインが動いていてもレイアウト機能が使えなくなることがあります。テーマの更新情報も併せて確認してください。
移行できない理由を明確にしておく
「使いにくいから」だけが理由であれば、慣れの問題です。一方で「制作会社の独自機能が対応していない」という理由であれば、それは技術的負債です。後者の場合、テーマの更新や作り直しをいつ行うかの計画が必要になります。(対応できないまま数年が経つと、選択肢はさらに減ります)
最後に
ブロックエディタへの移行は、公開済み記事の表示を変えるものではなく、編集画面だけの変更です。既定のエディタを切り替え、新しい記事から使い始め、Classic Editorは当面残しておく。この進め方なら、リスクはほとんどありません。逆に旧エディタのまま数年放置すると、テーマの更新やサポート終了のタイミングで一気に問題が表面化します。
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