ホームページのリニューアルが「思っていたものと違う」「予定より半年遅れた」「公開後に検索流入が半減した」という結果に終わるケースは珍しくありません。原因の多くは制作会社の技術力ではなく、発注側が決めるべきことを決めないまま進めたことにあります。この記事では、発注側が準備すべきものと、工程ごとの確認事項を整理します。
失敗の原因は制作会社ではなく発注側の準備にある
厳しい言い方になりますが、実務での実感です。
制作会社が決められないことがある
自社の強みは何か、誰に何を伝えたいか、どの問い合わせを増やしたいか。これらは制作会社には決められません。決まっていないまま進めると、制作会社は「よくある構成」で埋めるしかなくなります。結果として、どこかで見たことのあるサイトができあがります。(他社と似ているのは、中身を決めなかった結果です)
写真と原稿の遅れが最大の遅延要因
リニューアルが遅れる理由の大半は、発注側から素材が出てこないことです。デザインは1週間でできても、社員写真の撮影日が決まらず2ヶ月止まる、というのが典型的な進行です。
公開後の流入減はリダイレクト設計の漏れ
リニューアル後に検索流入が急減する原因は、デザインではなくURLの変更です。旧URLから新URLへの転送設定が漏れていると、検索結果からのアクセスがすべて404になります。これは技術的な作業であり、発注時に要件として明示していないと抜けることがあります。
発注前に社内で決めておくこと
制作会社に相談する前に固めておく項目です。
| 決めること | 決まっていないと起きること |
|---|---|
| リニューアルの目的 | 判断基準がなく、好みの議論になる |
| 増やしたい問い合わせの種類 | 導線設計ができず、ただの会社案内になる |
| 公開希望日と理由 | 工程が引き延ばされる |
| 予算の上限 | 見積もりが比較できない |
| 社内の決裁者と窓口担当 | 確認のたびに差し戻しが発生する |
| 公開後に誰が更新するか | 更新できない構造で納品される |
目的は「古いから」以外の言葉にする
「デザインが古いので新しくしたい」は目的ではなく症状です。採用応募を増やしたい、施工事例で信頼を伝えたい、電話ではなくフォームからの問い合わせに変えたい。目的を1文で言えるようにしてから発注してください。この1文が、以後すべての判断基準になります。
公開後に誰が更新するかを最初に決める
これを決めずに進めると、更新に専門知識が必要な構造で納品されます。社内で更新するなら、その担当者が使える仕組みであることを要件に含めてください。更新できないサイトは、公開日が最も新しい日になります。
窓口担当を1人に絞る
複数人が別々に制作会社へ指示を出すと、指示が矛盾し、手戻りが発生します。社内の意見は窓口担当が集約してから伝えてください。
発注時に要件として伝えるべき技術項目
見落とすと後で費用が発生する項目です。
要件に入れておく項目
- 旧URLから新URLへのリダイレクト設定を含めること
- 公開後にサイトマップを再送信すること
- アクセス解析とSearch Consoleの設定を引き継ぐこと
- スマートフォン表示に対応すること
- 常時SSL化に対応すること
- ドメイン・サーバーの契約者を自社名義にすること
- 納品時に管理者アカウントを自社名義で発行すること
- 使用する有料テーマ・プラグインのライセンスを自社名義にすること
- 制作データ(ロゴ・写真の元データ)を納品すること
リダイレクト設定は必ず要件に明記する
URLが変わる場合、旧ページと新ページの対応表を作り、1対1で転送する設計が必要です。トップページにまとめて転送すると、個別ページの評価は引き継がれません(出典 Google 検索セントラル サイト・ホームページ移行について)。
ライセンスと名義は納品条件に含める
有料テーマが制作会社名義で購入されていると、契約終了後に更新が受けられなくなります。ドメインの名義が制作会社になっていれば、将来の移管が困難になります。これらは公開後には交渉が難しくなるため、発注時に条件として明示してください。
工程ごとに確認すべきこと
進行中のチェックポイントです。
設計段階でページ構成を確認する
デザインに入る前に、どのページを作るか、各ページに何を載せるかの一覧を確認してください。この段階での変更は費用が発生しませんが、デザイン完成後の構成変更は追加費用の対象になります。
デザイン確認はスマートフォン版も必ず見る
PC版のデザインだけ確認して承認すると、スマートフォン版が想定と違うものになることがあります。閲覧の大半がスマートフォンである以上、確認すべき優先順位も本来は逆です。
公開前に必ず自分で全ページを確認する
- 全ページを開いて表示崩れがないか
- 会社情報・電話番号・住所が正しいか
- 問い合わせフォームからテスト送信し、メールが届くか
- スマートフォンで表示と操作を確認したか
- 旧サイトの主要URLが新サイトに転送されるか
- 検索エンジンに公開する設定になっているか
検索エンジンのブロック解除を必ず確認する
制作中はテスト環境を検索結果に出さないため、検索エンジンをブロックする設定にしています。公開時にこの解除を忘れると、リニューアル後に検索流入が完全に消えます。WordPressの「設定」から「表示設定」で確認できます。(見た目は完璧なのに、誰も来ないサイトができあがります)
公開後1ヶ月は監視期間と考える
公開して終わりではありません。
公開直後に確認すること
公開当日は、全ページの表示・フォームの動作・SSLの鍵マーク・旧URLの転送を確認します。翌日以降は、Search Consoleでエラーが増えていないか、アクセス解析で流入が急減していないかを見ます。
順位の変動には数週間の猶予を見る
リニューアル直後は検索順位が変動することがあります。正しく移行できていれば数週間で落ち着くのが通常です。変動に慌てて追加の変更を加えると、原因の切り分けができなくなります。
保守契約の内容を公開前に確定させる
公開後の更新・バックアップ・不具合対応を誰がいくらで行うのかは、公開前に決めておいてください。ここが曖昧なまま公開すると、数ヶ月後に「更新は別料金です」という話になります。
最後に
リニューアルの成否は、デザインの良し悪しではなく、目的が1文で言えるか、素材を期日どおり出せるか、技術要件を発注時に明示できるかで決まります。特にリダイレクト設定・名義とライセンス・公開後の更新体制の3点は、公開後には交渉が難しくなります。発注前のこの準備に時間をかけるほど、進行は速く、結果は良くなります。
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