廃業・事業譲渡・法人の解散が決まったとき、ホームページをどう畳むかは後回しにされがちです。しかし手順を誤ると、閉じたはずのドメインが第三者に取得されてまったく別の内容のサイトが自社名で公開される、取引先へのメールが届かなくなる、といった問題が起こります。この記事では、事業終了時の正しい閉じ方を工程順に整理します。
いきなりサーバーを解約するのが最悪の手順
結論から書きます。サーバーの解約を先に行うと、告知もできず、メールも止まり、後戻りもできなくなります。
正しい順序
- 終了の告知をホームページに掲載する
- 必要なデータを手元に保存する
- 外部サービスの登録情報を整理する
- メールの停止時期を関係者に周知する
- サイトを閉鎖し、案内ページのみを残す
- 期間を置いてサーバーを解約する
- ドメインの扱いを決めて処理する
いきなり消すと取引先が確認できなくなる
廃業後も、取引先や顧客が連絡先や経緯を確認しようとしてサイトを訪れます。サイトが消えていると、問い合わせ先が分からず、直接個人へ連絡が来ることになります。案内ページを一定期間残すことで、この混乱を防げます。
告知は最低3ヶ月前から出す
可能であれば、終了日の3ヶ月前から告知を掲載してください。取引先が代替先を探す時間を確保でき、問い合わせの集中も避けられます。(黙って消えるのが最も迷惑をかける方法です)
ドメインの扱いは3つの選択肢から選ぶ
最も判断が必要なのがドメインです。
| 選択肢 | 費用 | リスク | 向いているケース |
|---|---|---|---|
| 更新を止めて失効させる | 0円 | 第三者に取得される可能性がある | 知名度が低く、被リンクも少ない場合 |
| 数年間は更新を続ける | 年間数千円 | 更新忘れのリスク | 顧客が多い、社名の知名度がある場合 |
| 事業譲渡先に移管する | 移管手続きのみ | 名義変更の手続きが必要 | 事業を引き継ぐ相手がいる場合 |
失効したドメインは第三者が取得できる
ドメインの更新を止めると、一定期間後に誰でも取得できる状態になります。ある程度アクセスや被リンクのあったドメインは、取得して別の目的に使われることがあります。過去の自社ドメインで、まったく無関係な内容のサイトが公開される可能性があるということです。
顧客が多い場合は数年間の維持を検討する
年間数千円の維持費で、第三者による取得と、それに伴う信用毀損を防げます。医療・士業・教育のように顧客との関係が長い業種では、少なくとも2〜3年は維持する判断が合理的です。
.co.jpは法人解散に伴う扱いに注意する
.co.jpは登記された法人であることが登録の条件です(出典 JPRS JPドメイン名の種類と登録資格)。法人を解散する場合、ドメインの扱いについてはドメイン管理会社に事前に確認してください。
ドメインを維持する場合、更新料の支払い方法とその管理者を明確にしてください。法人を解散すると、法人名義のクレジットカードが使えなくなり、自動更新が失敗します。
メールの停止は最も慎重に扱う
サイトより実務上の影響が大きいのがメールです。
停止日を事前に周知する
取引先・顧客・関係機関に、いつメールアドレスが使えなくなるかを通知してください。特に、請求書のやり取りや行政手続きで使っているアドレスは、影響範囲が広くなります。
過去のメールデータを保存する
- 取引記録として保存が必要なメールを特定する
- PCのメールソフトにデータが残っているか確認する
- サーバー上にしかないメールをダウンロードする
- 保存先を決め、保存期間を明確にする
- 誰がそのデータを管理するかを決める
法人の帳簿書類には保存義務があり、メールでやり取りした請求書等も対象になる場合があります。サーバーを解約すればサーバー上のメールは復元できません。解約前に必ず保存してください。
転送設定で猶予期間を作る方法もある
ドメインを維持する場合、旧アドレス宛のメールを個人のアドレスへ転送する設定にしておけば、届いたメールを取りこぼしません。ドメインを維持する期間中は、この設定を有効にしておくと安全です。
外部サービスの整理を忘れない
サイト本体以外にも処理すべきものがあります。
整理すべき外部サービス
| サービス | 放置した場合の問題 |
|---|---|
| Googleビジネスプロフィール | 閉業表示にしないと来店が発生する |
| SNSアカウント | 放置アカウントが乗っ取られる |
| ポータルサイトへの掲載 | 掲載料が請求され続ける |
| メール配信サービス | 顧客リストが残り続ける |
| クラウドストレージ | 業務データが管理者不在で残る |
| 各種SaaSの月額契約 | 解約しないと課金が継続する |
Googleビジネスプロフィールは閉業設定にする
店舗型の事業では、Googleマップに情報が残り続けます。閉業として設定しないと、営業していると思った人が来店します。削除ではなく閉業設定にするのが正しい処理です。
SNSアカウントは削除するか最終投稿を残す
放置されたアカウントは乗っ取りの対象になります。削除するか、終了を告知する投稿を最後に残したうえで、パスワードを強固なものに変更して凍結してください。
月額契約のサービスをすべて洗い出す
クレジットカードの明細を12ヶ月分確認し、Web関連の定期課金をすべて洗い出してください。年払いのサービスは見落としやすく、解約し忘れると翌年に請求が来ます。
個人情報の取り扱いを最後に処理する
事業終了後も残る責任です。
問い合わせフォームの蓄積データを削除する
WordPressに問い合わせ内容が保存されている場合、そこには氏名・電話番号・相談内容といった個人情報が含まれます。サイトを閉じる際、これらのデータをどうするかを決めてください。保存する場合は保管方法と期間、削除する場合は確実な削除を行います。
サーバー上のデータを確実に消す
サーバーを解約すればデータは消えますが、解約前にバックアップファイルが外部ストレージに残っていることがあります。クラウドストレージに残したバックアップにも、顧客情報が含まれています。保管の要否を判断し、不要なら削除してください。
事業譲渡の場合はデータの引き継ぎ範囲を明確にする
事業を譲渡する場合、顧客データを引き継ぐかどうかは慎重な判断が必要です。個人情報の取り扱いに関わるため、譲渡契約の中で明確にし、必要に応じて専門家に確認してください。
最後に
ホームページを畳む作業は、開設するより判断が必要です。告知を出してから閉じる、メールデータを保存してから解約する、ドメインの扱いを意図的に決める。この3点さえ押さえておけば、閉じた後に問題が起きることはほとんどありません。特にドメインは、失効させるか維持するかを「決めていない」状態が最も危険です。
Web管理では、月額1万円からホームページの運用保守を代行しています。閉鎖時の告知掲載、データの保存、外部サービスの棚卸し、ドメインの維持管理までお手伝い可能です。事業承継に伴う引き継ぎのご相談も承ります。

