求人を強化したいので採用サイトを別に作りたい、という相談は非常に多くあります。しかし採用サイトを分けるということは、管理すべきサイトが1つ増えるということです。制作費だけでなく、更新の手間・保守費用・情報の食い違いという継続的なコストが発生します。この記事では、分けるべきケースとそうでないケースを、運用コストの観点から整理します。
年間の採用人数が5名未満なら分ける必要はない
結論から書きます。中小企業の多くは、本体サイト内の採用ページを充実させる方が費用対効果が高くなります。
判断の目安
| 状況 | 推奨 | 理由 |
|---|---|---|
| 年間採用が数名、通年募集ではない | 本体サイト内のページ | 更新頻度が低く分ける利点がない |
| 年間10名以上を継続的に採用 | 分離を検討 | コンテンツ量が本体を圧迫する |
| 新卒採用を毎年行っている | 分離を検討 | 年度ごとの情報整理が必要 |
| 職種が多く募集要項が複雑 | 本体サイト内で構造化 | 分けなくても整理は可能 |
| 採用管理システムを導入する | サブドメインで分離 | 別システムのため技術的に分離が必要 |
| 本体サイトが古く更新できない | 本体の改修を優先 | 採用サイトだけ新しくても不信感が出る |
分けると管理対象が丸ごと1つ増える
採用サイトを別ドメインやサブドメインで作ると、SSL証明書・WordPressの更新・バックアップ・セキュリティ対策がすべて別に必要になります。月々の保守費用も、単純に2サイト分です。(3年前に作った採用サイトのWordPressが更新されないまま放置されている、というのはよく見る光景です)
本体サイトが古いまま採用サイトだけ新しいのは逆効果
採用サイトを見て興味を持った応募者は、必ず本体サイトも確認します。そこで10年前のデザインのサイトが出てくれば、採用サイトの内容が作り込まれた宣伝に見えてしまいます。優先順位は本体サイトの改善が先です。
応募が来ない原因は分離の有無ではない
そもそもの問題設定を確認します。
採用ページに載っていない情報が多すぎる
応募を検討する人が知りたいのは、給与・勤務時間・休日・仕事内容の具体像・職場の雰囲気です。これらが書かれていないページは、サイトを分けても応募は増えません。
- 給与が「経験に応じて優遇」だけで金額が書かれていない
- 年間休日数が書かれていない
- 残業時間の実績が書かれていない
- 仕事内容が「一般事務」など抽象的な記載のみ
- 働いている人の写真や声がない
- 応募方法が電話のみで、フォームがない
応募フォームがないサイトは応募を捨てている
電話での応募のみという設定は、応募のハードルを大きく上げます。特に在職中の求職者は、勤務時間中に電話をかけられません。フォームを1つ設置するだけで、応募数が変わることがあります。
スマートフォンで見づらいと読まれない
求職者の大半はスマートフォンで求人を探します。募集要項が表組みで画面からはみ出している、PDFで掲載されていて拡大しないと読めない、といった状態は致命的です。
本体サイト内で採用を強化する方法
分けずに充実させる場合の構成です。
採用情報をサブディレクトリで階層化する
本体サイトの中に、採用のトップページと職種別のページを作る構成にします。example.com/recruit/ を入口として、その下に職種別・募集要項・社員紹介・応募フォームを配置すれば、独立したサイトに近い体験を提供できます。管理対象は1つのまま、内容だけを充実させられます。
本体のデザインを流用できる利点がある
同じサイト内であれば、テーマもデザインもそのまま使えます。採用ページのために別途デザイン費用をかける必要がなく、本体サイトを改善すれば採用ページも同時に良くなります。
検索評価も本体に集約される
Googleは、サブドメインとサブディレクトリのどちらを選ぶかについて、ビジネス上意味があればどちらでも構わないとしたうえで、サブディレクトリの方がサイトの管理が容易になる場合があると述べています(出典 Google 検索セントラル SEO スターター ガイド)。管理の容易さを優先する判断は、公式の考え方とも整合します。
分ける場合に必ず決めておくこと
それでも分離が必要な場合の準備です。
更新担当と更新頻度を先に決める
採用サイトは、募集が止まると更新も止まります。募集していない期間にどう見せるかを決めていないと、「募集終了」のまま数年放置されます。通年で情報を出し続ける体制があるかを、作る前に確認してください。
本体サイトとの情報の食い違いを防ぐ
会社概要・所在地・電話番号・事業内容が2箇所に存在することになります。移転や社名変更のたびに両方を直す必要があり、片方だけ古いまま残るのが典型的な事故です。更新時のチェックリストに両サイトを入れてください。
保守費用を含めた総額で判断する
制作費だけでなく、月額保守・ドメイン費用・SSL・サーバー費用を含めた3年総額で比較してください。年間の採用人数で割ると、1人あたりの採用コストが見えます。求人媒体への出稿費用と比べて妥当かどうかが、判断の基準になります。
採用管理システムを使う場合は分離が前提になる
応募者管理システムを導入する場合、サービス側の仕様上サブドメインでの運用が前提になることがあります。この場合は選択の余地がなく、分離が必要です。
採用サイトを作ったまま更新が止まると、募集終了の求人が検索結果に残り続けます。応募者が古い情報を見て問い合わせてくる状態は、採用活動そのものの信頼を下げます。
採用ページで実際に効く改善
分ける分けない以前に効果のある施策です。
働いている人の顔と声を載せる
社員インタビューは、求職者が最も読む項目のひとつです。難しい撮影は必要なく、スマートフォンで撮った写真と数百字のコメントでも効果があります。載せる際は、必ず本人にWeb掲載の同意を取ってください。
1日の流れを時系列で書く
「9時出社、午前は◯◯、12時休憩」という具体的な記載は、抽象的な仕事内容の説明より遥かに伝わります。職種ごとに用意すると、応募のミスマッチも減ります。
退職者が出た情報は速やかに更新する
社員紹介に載っている人が既に退職している状態は、応募者に気づかれます。人が入れ替わったら更新する運用にしてください。
最後に
採用サイトを分けるかどうかは、応募が来ない原因の答えではありません。年間の採用規模が小さいなら、本体サイト内の採用ページを充実させる方が、費用も管理コストも抑えられます。まずは給与・休日・仕事内容の具体化と、応募フォームの設置という基本を整えてください。それでも情報量が本体を圧迫するようになった段階で、分離を検討すれば十分です。
Web管理では、月額1万円からホームページの運用保守を代行しています。採用ページの構成整理、募集要項の更新代行、応募フォームの設置まで対応可能です。「採用サイトを提案されたが必要か判断できない」というご相談も歓迎します。

