電子帳簿保存法もインボイス制度も経理の話だと思われがちですが、ホームページでオンライン決済や請求書のダウンロードを提供している場合、サイト側にも対応が必要になります。この記事では、自社サイトが対象になるかの判断と、実務で確認すべき箇所を整理します。
本記事は制度の概要とサイト運用側の論点を整理したものです。自社の取引が対象になるか、どの保存方法を選ぶべきかといった判断は、国税庁の公表資料を確認のうえ、顧問税理士または所轄の税務署にご相談ください。
サイトで取引書類を発行しているかが分かれ目
まず自社が対象になるかを判断します。
会社案内中心のサイトなら影響はない
会社概要・サービス紹介・お問い合わせフォームだけのサイトであれば、ホームページ側で特別な対応は必要ありません。問い合わせフォームの受信内容は取引書類ではないため、電子帳簿保存法の電子取引には該当しないのが通常です。
対応が必要になる可能性があるケース
| サイトの機能 | 論点 |
|---|---|
| オンライン決済がある | 領収書・請求書の発行と保存 |
| マイページから請求書をダウンロードできる | 電子取引データの保存要件 |
| 申込フォームが注文書を兼ねている | 取引情報として保存の対象になり得る |
| 見積書をサイト上で発行している | 同上 |
| 会員向けに取引履歴を提供している | 保存期間とデータ保持の設計 |
電子取引データは電子のまま保存する必要がある
電子帳簿保存法では、電子的にやり取りした取引情報について保存の要件が定められています。国税庁が制度の解説と一問一答を公開しています(出典 国税庁 電子帳簿保存法関係)。紙に印刷して保存すれば足りるという扱いではない点が、従来との大きな違いです。
サイト側で確認すべき実務的な箇所
決済や書類発行がある場合の確認項目です。
発行した書類がどこに保存されているか
決済システムやECプラグインが発行した領収書・請求書が、どこに保存されているかを把握してください。外部サービス上にしか存在しない場合、そのサービスの保存期間を超えるとデータが失われます。
- 発行した書類の保存場所(自社サーバーか外部サービスか)
- 外部サービスの場合、データの保存期間
- 解約した場合にデータを取り出せるか
- 検索できる状態になっているか(取引年月日・金額・取引先)
- 保存すべき期間を満たせる設計になっているか
外部サービス依存のリスク
決済代行サービスやECプラットフォームを解約すると、そこに保存されていた取引データにアクセスできなくなることがあります。保存義務のある書類を外部サービスだけに置く構成は、解約や事業終了のタイミングで問題になります。定期的に自社側へ書き出す運用を検討してください。
問い合わせフォームの内容は別の観点で管理する
フォームの受信内容は取引書類ではありませんが、個人情報を含みます。保存期間を決めて定期的に削除する運用が必要です。目的が異なるため、電子帳簿保存法の保存義務とは別に考えてください。
インボイス制度でサイトに関わる部分
こちらは主に表示の話です。
登録番号の掲載は義務ではないが実務的に有用
適格請求書発行事業者の登録番号をホームページに掲載する法的な義務はありません。ただし、取引先が事前に確認したい場合に問い合わせの手間が省けるため、会社概要ページに記載しているケースが増えています(出典 国税庁 特集 インボイス制度)。
掲載する場合の記載場所
会社概要ページの基本情報欄が一般的です。特定商取引法に基づく表記を設置しているサイトでは、そこに併記する構成もあります。
オンライン決済がある場合は領収書の記載事項を確認する
ECサイトなどで領収書を発行している場合、適格請求書として必要な記載事項を満たしているかの確認が必要です。使用している決済サービスやプラグインが対応済みかを、提供元に確認してください。古いプラグインでは対応していない可能性があります。
免税事業者の場合の表示
登録していない場合、登録番号を書くことはできません。登録していないのに番号らしきものを記載するのは避けてください。取引先が確認できる公表サイトが用意されているため、虚偽の記載はすぐに判明します。
サイト運用者として現実的にやるべきこと
専門的な判断は税理士に委ねつつ、サイト側で対応できる範囲を整理します。
まず自社サイトが対象かを切り分ける
- サイト上で決済を受け付けているか確認する
- 請求書・領収書をサイトから発行しているか確認する
- 申込フォームが注文書の役割を果たしていないか確認する
- いずれも該当しなければ、サイト側の対応は不要
- 該当する場合、書類の保存場所と期間を洗い出す
- 洗い出した内容を顧問税理士に共有して判断を仰ぐ
使用しているプラグインとサービスを一覧化する
決済・請求・受注に関わるプラグインや外部サービスを一覧にしてください。それぞれについて、発行される書類の内容と保存場所を確認します。この一覧がないと、税理士も判断ができません。
更新されていないプラグインは要注意
制度は改正されます。決済や請求書発行に関わるプラグインが数年更新されていない場合、現行の要件に対応していない可能性があります。この領域のプラグインは、更新が続いているものを使うことが実務上の要件です。
会社概要ページの記載を最新にする
登録番号を掲載する場合に限らず、会社概要ページの情報は制度対応の起点になります。所在地・代表者名・資本金といった基本情報が古いまま放置されていないか、この機会に確認してください。
あわせて見直すとよい表示項目
制度対応を確認するタイミングで、周辺の表示も整理できます。
特定商取引法に基づく表記
サイト上で申込を受け付けている場合、この表記が必要になります。記載されている電話番号や責任者名が古くなっていないかを確認してください。
プライバシーポリシー
フォームで個人情報を取得している時点で必要です。取得目的と保存期間の記載が実態と合っているかを見直してください。
取引条件の記載
支払方法・納期・返品条件などが、実際の運用と一致しているかを確認します。サイトに書いてあることと実際の運用が食い違うと、それ自体がトラブルの原因になります。
最後に
電子帳簿保存法とインボイス制度でホームページ側の対応が必要になるのは、サイト上で決済や書類発行を行っている場合に限られます。会社案内中心のサイトであれば、影響はほとんどありません。該当する場合は、発行される書類の内容と保存場所を一覧化し、その資料をもとに顧問税理士へ相談するのが最も確実な進め方です。サイト運用側の役割は、判断そのものではなく、判断に必要な現状を正確に把握して渡すことにあります。
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